2021.4.1の朝は今日だけなので書いておこうと思った

息子が出社していった。

入社式だ。

朝食を済ませた後、散々伸ばしっぱなしにしていた髭を剃る。

髪に何かつけて、形を整える。

昨日は眉を整えていた。

小遣いで新しくあつらえた上等な眼鏡に付け替える。

ワイシャツに袖を通す。

「ネクタイ、どうやって結ぶんだっけ、遠隔で教えて」

卒業式までは「やってくれ」と覚えようともしなかったのが自分でやるという。

幼稚園児が年少さんから年中さんになった日に、今日から自分で靴下を履く!と決意するのと似てる。

「太い方を長めに持って・・それで下からくるっと回して・・」

背広を着ない人がほとんどの会社なので、これも今日だけだ。明日からはどんな格好をしていくのだろう。

いろいろ洋服やらコートやらネットでスタイリストの動画を見て買い揃えていた。

背広を羽織り、黒い鞄を下げ、名刺入れを持ち、黒い靴を履く。

 

 

「じゃ、行ってくるんで」

夫がどどどどどどっと、階段を降りてきた。気配を窺っていたに違いない。

「頑張ってな」

「うるさい、じゃあな」

にやっと小さく右手をあげる。

「おめでとうございます。行ってらっしゃいませ」

深々頭を下げ笑った。

一瞬戸惑い、また照れ笑いをし、じゃ、ともう一度言って出ていった。

なんだか、慣れない。

見送るだけだから、まだピンとこない。

とにかく、なんとか送り出した。

神様から預かった命。