昨日の続きなのである。
冷凍ミートボール、まさかの
「これ、残していい?全部食べなきゃダメ?」
「え?美味しくないっ?」
私は食事制限があるため自分の皿にはつけていない。
「なんか・・・味がしない・・ていうか水っぽい」
単純に冷凍庫から出して、レンジで温めただけで出した。作った当日、二人とも美味しいと言っていたし、大さじ一杯からレシピ通りにやったから味付けの問題ではない。おそらく、解凍の仕方がよくなかったのだろう。
もう一度、鍋で煮込み直すとか、ケチャップやソースなどを絡めるなどすれば良かったのだ。
「味しない?」
夫に聞くと、たいていのものは文句言わず食べる彼は「いや、気にならないよ」と目の前で食べてみせる。
「息子の言うのもわかるかな、でも、これ、チーズを絡めて食べると美味しいよ」
レンジで温めるときにピザ用チーズを散らした。
それと一緒に口に入れるといいと息子の立場も守り、妻も傷つけないよう平和的にそう言った。
手抜きをしておきながら「おいしくない」とはっきり言われるとかなり凹む。
さすがに我慢して食べろとも言えず、息子の皿からミートボールを引っ込め、冷蔵庫にあった生姜焼きを温め直して差し替えた。
「いいの?」
「どうぞ・・・。夫も、無理しなくていいよ、取り替えようか」
「いや、いい、僕、これ美味しいよ」
励ますような明るい声であることは、長い付き合いなのでわかる。
向こうも向こうで、ここで「じゃあ僕も」と言えば私がとことん落ち込むと知っているのだ。
「なんだよ」
まずいと言い放った自分が悪者になったようで、今度は息子が膨れる。
「いいから。これはトマトソースで煮込んでスパゲティにでも使うから」
その晩はそれで終わった。
夜中に利尿剤の影響で何度も目が覚める。
そのたびにミートボールの衝撃が頭をよぎる。
簡単にケチャップとソースで絡めて昼ごはんのおかずにしようか。
カレーに使っちゃおうか。でもそしたら昨日買った鶏肉は・・量を減らす?でもおいしくないだろうなあ。
明日こそカレーをさっさと作って一日のんびりと思っていたけど、やめて、いっそのことミートソースを作ってそこに入れようか。
落第点をもらった代物を早いとこ変身させて及第点料理にさせてしまいたい。
あの失敗を無かったことにしたい。
ウトウトしてはトイレに立ち、またミートボールについて考え、いつの間にかウトウト。そしてまたトイレ。
3度目のトイレで目覚めたときは午前5時だった。
そのまま起き上がり、一階に降りて洗濯機を仕掛けた。
冷蔵庫を開け、問題の品の入ったタッパーを眺める。
今、ケチャップで簡単に味付け直し、やっちゃおうか。それで朝ごはんに出しちゃおうか。
・・・・・いやいやいやそれが私の悪い癖だ。
毎日100点満点を狙うな。
毎日喜ばせようとするな。
毎日得意になろうとするな。
そこそこ。そこそこに。
完璧を目指そうとしない。失敗だらけの自分の方が本来の私らしいんだから。
今夜はやっぱり無難にカレーにしとこ。
これはこれで、しばらくこのままにしておこう。なんか新しい思いつきがあるさ。
ふと、コンビニの金のハンバーグが目に留まる。
素直にこっちを出しておけばよかった・・・。
しばしじっと眺め、冷蔵庫の扉をパタンと閉めた。