身体は嫌がって頭は焦って

「今日どっか出かけるの?」

「用事はないけど散歩に行くかも」

今日は朝から天気がいい。気温も上がるとどの天気予報士も嬉しそうに言っている。

『暑がりさんは半袖でもいいかも知れません。』

『週末は春の嵐の予報です。桜も今日のうちに見ておいた方がいいかもしれませんね』

作り置きの麻婆豆腐に野菜炒めもやしと餃子もあるし夕飯の支度も心配ない。日向ぼっこがてら少し歩いてこようかと考えているところだった。

・・・。

しばし考える。

「わかんない、なんだか一日中家に居ることの罪悪感から外に行こうとしているような気もする。よく考えてからにする」

そうしろ、まったりなと言い残し、息子は2階に上がっていった。

一人遅めの昼ごはんを食べる。

夫と息子がつけっぱなしにしていったテレビの音声もその情報も煩わしく、電源を切った。

しんっと静まり返った空間にホッとする。

ちゃぶ台におお盆を置いて座る。ラジオも気分でない。YouTubeも違う。サンドウィッチマンポッドキャストを聴いてみる。

静かに淡々と続く二人のおしゃべりを聞きながらパンを齧る。

低くゆっくり話す声は急に盛り上がったり大声で笑い出したりはしない。

ぽつ、ぽつっと緩く喋る。時々優しいユーモアが混じる。

 

・・・。

3時、・・3時半に出て、4時に戻ればいっか。

・・・。

食べ終わった後もこのままぼんやり聞いて過ごしたいのに、散歩に行って帰って夕飯の支度の段取りが気になる。

早く行って帰ってこないと間に合わない。日が暮れると寒くなっちゃう。

 

・・・今日、やめよっかな。

それほど外に行きたくて散歩と思いついたわけでもないようだった。

ただ、天気の良い気温の上がる春の日に何か春らしいことしなくちゃと心が焦ったようだった。

一日家にいちゃいけない気がしただけで。

 

・・・・・やめよ。

義務じゃないんだから。修行じゃないんだから。

今日はお篭りDAYってことで・・。

自分で自分に納得させた。

 

このワンステップを踏まないと予定変更ができない不器用さ。

頭と身体の意思疎通がうまくない。