一緒に歩いて

昨日は夫が週末二日出社した振替で休みだった。

「どこかドライブ行こうか」

外出できない私の気晴らしに銀座や神保町をぐるっと回ってやるのが一番だと思っている。

確かに、結婚する前住んでいた神保町も、遊んでいた華やかな街も、そこに行くと懐かしさで気持ちがはずむ。

しかし今は、コロナ警戒中。おまけに私は体力がないので要注意人物。

よって、このドライブ、車からおろしてもらえない。

もちろん、どこかでお茶もできない。

運がいいと、「コーヒー飲む?」と聞かれ、喜び頷くと「ちょっと待ってて」と彼だけ外に出ていき、どこかの店でテイクアウトされたものを車内、二人並んで飲む。

帰宅して息子に

「ドライブして、お茶してきた、母さんとお茶してきた、ねッ」

と得意そうに報告し、振り返られると「うん、まあ、そうね」と複雑に微笑むのだ。

ドライブ行こうか。昨日はそれを断った。

「一緒に買い物行ってよ」

近所のスーパーに一緒に歩いて行って欲しいと頼んだ。

今の私に唯一許されている外出先には、散歩がてら行ってくると言い訳し、ほぼ毎日出向いている。

なのでどうしても買い足さないとならないものはないのだが、天気の良い平日、夫と二人でスーパーに行くというのをやりたかったのだ。

「どこ?スーパー?歩いて?」

そんなんでいいのという顔になり、それからすぐ「いいよ、いつ行く?今行く?」となった。

いつも一人で歩く道を二人並んで歩く。

「ここ、ゴミ置き場問題勃発、知ってる?」

母から聞いた我が家の両脇ゴミ置き場問題を面白おかしくしゃべる。

「それはちょっとどうかなぁ。あそこ、狭いよ、どうやってもうちの門の前に広がるよ。通りすがりの人も捨ててくだろうし。それ、お向かいさんに決まる前にちょっと言った方がいいよ」

「じゃあどうぞ言いに行ってよ。うちの夫が何か申し上げたいことがあるようでって言っておくから」

「や、それはダメでしょう。僕はダメでしょう。関係がまずくなる」

「私だってせっかく仲良いのにやだよ。ゴミ掃除する方がずっといいもん」

「じゃあ息子に行かせるか、ふっふっふ」

「じゃあ、息子に自分でそう言ってよね」

「ダメダメダメ、なんで俺がって喧嘩になる」

「やあよ、みんなで私にめんどくさいこと押し付けるんだから」

結局掃除をマメにする方が平和だと意見が一致し店内に入る。

アルコール消毒の場所を教える。夫はペダルを踏んで出す消毒液の仕組みに戸惑う。

自分で持たないカゴに、ポイポイ野菜を入れていく。魚売り場で眺めていると夫が急に笑い出した。

「しかし、それ笑えるな。ゴミ置き場、お向かいさん、よっぽど我慢ならなかったんだな」

「ふふふふふ。積もり積もって。」

私も笑う。

車の車窓から懐かしい街並みを眺めるのもスカッとする。けれどどっちかというと、近所のスーパーまでを、ぽつぽつしゃべりながら歩く方が平和な感じで好き。

ドライブだと運転しているからそっちに集中する。

私も別にどうしても言わなくちゃならないこともないから黙っている。

 

「アイス、買おうか」

僕これ。大きなスーパサイズのバニラを選びカゴに入れていた。

往復ほんの40分の散歩。満足。