お休みの火曜日。
一緒に買い物に行くはずだった夫は急な電話が何やら立て込んでいるようで、長話になった。
なんだか身軽に一人で出かけたくなって、黙って家を出た。
帰宅すると起きてきた息子が気の毒がって「一人で重いの買ってきたのかよ、親父は何してんだ」と眉間に皺を寄せた。
「そう思うなら君がもっと早く起きて俺が行ってやるよっていう展開のはないのか」
「それはな、まあな」
本当にそんなことされたら私が辛い。今のように甘ったれて気ままにされている方が気持ちが楽だ。
息子にはハラハラと私の健康に気を使って欲しくない。いつバタっと倒れるんじゃないかと怯えいるのを感じる。二度三度救急救命に駆け込み一度は死にかけたものだからトラウマになっているのだろう。母親として申し訳ないのと、後悔とで複雑だ。
・・・とかっこいいことを言いながら、夫にはもう少し心配も気遣いもしてほしいんだが、こっちには物足りなさを常に感じる。
しかし、これもやっぱりこれでいいのだろう。
これで夫が無理して毎日風呂掃除や洗濯をし、気がついたら掃除機をかけ、料理を覚えようとし始めたらいたたまれない。
「何にもしなかったんだから、今晩、お皿洗って」
「やるやる、トンさん働いたもんな。任せなさい」
立ち上がる夫の横で大威張りでアイスクリームを食べている方が気が楽なような気がする。
夫はとっくに電話が終わり、そのまま2階で寝ていた。
「お昼、何か食べていい?あれ?買い物行っちゃったノォ?あらら」
一人で行きたかったからそっと出たくせに「行ってきました」とやや不機嫌っぽく、恩着せがましく答え、キャベツとウィンナーを炒めただけのものにぐちゃっと失敗した目玉焼きの乗った皿と食パンを指差した。
「ご飯もできてます」
ありがと〜これ、パン、やけばいい?と喜んでトースターを開ける夫にふんぞりかえる妻。
「お昼、お皿洗ってよね」
「はいはい、任せなさい」
これを破れ鍋に綴じ蓋と言う。・・・おそらく。