決戦は金曜日

息子の親知らずは無事抜歯もすみ、今現在はバリバリなんでも食べている。

これもあと4日。

今週の金曜には反対側の親知らずを抜く。先週のは歯茎から顔を出す寸前まで成長していたが、今度のはそれほどでもないと言われているらしい。

「じゃあ前のよりずっと楽だよきっと」

安心させようとそう言ってみるが、本人いわく「いや、油断禁物だ何があるかわからない」

と気を抜かない。

「またあの痛みが続くのかと思うとやんなるよ」

そうそう。こっちもまたあの離乳食体制かと身構える。しかし、あれだけ腫れても5日間。当初は痛み止めが足りなくなると飲むのを控えるほど怯えていたが、処方されたピッタリ5日分、飲み切った翌日からはすっかり平気になった。

「やるな、あの先生」。

「さすが」。

 

と、いうことは、根の張っていないものを抜歯する今回はきっとそれより痛みも腫れも軽く済むのではないかと推測している。

それも長くても5日で終わる。

大体、どんなものなら食べられるのかつい最近やったばかりだから把握もしている。

なんとかなるでしょ。

うちは一人息子だから経験ないが、二人目を迎えたお母さんたちはみんな、こんな感覚で二度目の離乳食に挑むのだろうか。

生協の注文に、前回を思い出し、卵、牛乳を増量、ジャガイモ、白身魚、はんぺん、鶏ひき肉のバラ凍結を追加する。頭の中でガーッとブレンダーにかけられるものをイメージしながらボタンを押す。

もやしも買っとこう。あれも小さく切ればいけるんだった。

今度は伊達巻を作ろう。好物だし、やわやわだし。固形物は食べるが、まだ口が大きくひらかず硬いものが噛めない状態になってからの方が、何を作るか困った。

伊達巻。やってみよう。

コーンの缶詰のクリームタイプも用意した。

これをそのままでもいいし、グラタンにしてもいい。スープにも。

いろいろやってみたい献立が浮かんでくる。

その間夫にはどうするかとちょっと考え、ま、いいかと思い直す。

本当の離乳食みたいにずっとじゃないしな。たった5日なら、連日カレーでもポトフでも勘弁してもらおう。単身赴任してたと思えば栄養バランスもそんなに心配しなくても大丈夫。なんならその間、夫もやわやわメニューに付き合ってもらってもいっか。

たった5日だもん。

「なんだか今度は大体のイメージがわかってるから、かわいそメーターがそんなに作動しないかもしれない。」

「おい、ちゃんとかわいそがれ。」

「痛い痛いって言われても、はい、あと4日、はいはい、あと3日の辛抱ですねって、ふふふふふ」

次だってかわいそうなんだぞと、息子は手厚い扱いと深い同情を要求する。

決戦は金曜日。

それまでの4日間、鶏の唐揚げ、生姜焼きと、ガッツリ肉食の献立が並ぶのだ。