甘える

夫に謝った。

「ごめんね。」

「何が」

「ここんとこ暗くて。どうにかせねばと思っているんだけど・・」

どうにもならなくてと言おうとしたら、被さるように

「そんなこと全然気にしなくていいヨ。トンさんはいるだけでいいんだから。トンさんは元々がかなり明るいから今の状態でも全く問題ないですよ。まぁ、ちょっといつもより元気がないかなとは思うけど、全く問題ないです」

「そう言ってもらうと、気持ちが楽になるよ、ごめんね」

「ごめんじゃないよ、父さんももっと手伝うようにするから。無理にどうこうしようとしなくていいです」

つっかえてたものがすとんと落ちた。

悪いなあと、思っていたんだ。けど、それすらも伝えずどんよりし続けて。

鬱陶しいだろうに。

そうだった。私はこの人のこの優しさのそばにいたくて結婚したんだ。

気が利かないとか、強引だとか、ケチだとか、気が短いとか、赤ちゃん言葉を使うとか、嫌なところばっかり目について、忘れてた。

一番大事なところ。

味方でいてくれる。

気が利いて、気前が良くても、その安心感がなければ暮らしてはいけない。

それっくらい私は甘ったれなんだ。

赤ちゃん言葉を使うから、私がお世話をして、あっちが甘ったれで「やれやれ」なんてとんでもないんだ。あれは上部だけの甘ったれで私のは根っこの部分からの甘ったれ。

「父さんにも謝ったよ」

息子が降りてきたのでそう言った。

「何が」

「暗くてごめんって」

だからごめんじゃないって!夫が後ろで叫んでる。

「ねえ、なんで急に謝ったりしてんの?」

息子がまっすぐこっちを見た。

「ずっとすまないなあと思ってたんだよ」

「別にいいのに。父さんなんかいつも嫌だって言ってるのに変な赤ん坊みたいな喋り方するし、母さんを蔑ろにして自分だけ好きなことやってるし、俺だってくだらない心配を母さんに聞かせるし、癇癪おこすし。母さんは我慢しすぎだ」

そんなことない。そんな立派な母さんじゃない。我慢してないから、ずっとどんより低いテンションをだらだら引きずってるんだ。我が儘なんだよ。本当は。我が儘なんだ。

「とにかくトンさんがなんと言おうと、少なくともここにいる二人は幸せになっているからなんの問題もないです」

夫が言った。

 

本当かな。

私を慰めようとして一生懸命励まして、そう言ってるんじゃないかな。

 

やめよう。

せっかく素直に謝れたんだもの。

素直に受け取ろう。

夫も息子もはるかに優しい人達なんだ。