二転三転一件落着

「ああ、ばあちゃん?俺。あれから一晩寝て考えたんだけどさ。やっぱり今日、豆まき行こうと思って」

 

昨夜、病院の結果をちゃんと詳しく知りたいと言う息子に検査結果の数値を見せて説明した。

その時暮れにパンパンに腫れていた時の数字が基準値の10倍以上もあるのを見つけこれはなんだとなった。

「うん、あの時は心不全不整脈を起こしてたんだって。でも薬が効いて一ヶ月で経過観察で大丈夫なところまできたから重大な病気じゃないでしょうって言われた」

「でもまだ数字は基準より多いだろ」

まあそうなんだけど。

「じゃあやっぱりコロナなんかに感染したら大変なことになるから、真剣に対策しないとな」

今現在も我が家のコロナ対策担当大臣の彼の管理はかなり厳しいが、口答えはできない。

「あと、これ親父にも見せろよ。ちゃんとこんなに重症なんだって言わないとわかってないぞ、あいつ。母さんは父さんが話をちゃんと聞かないと悲しくなって言うのやめるけど、ちゃんと、そこに座れと、大事な話があると、そうやらないとダメだぞ」

そんな大袈裟な。

まあ、わかったよ。じゃあ夕飯にしよう。

「そうだ、おばあちゃんが明日、豆まき、来てれるんでしょって。。コロナ対策で今あんまり出入りしたくないみたいって言ったけど、孫ちゃんに待ってるからねって伝えといてって。一応、伝えとく」

「いかないよ、今そういう時じゃないでしょう。なんで、ばあちゃんは何でもかんでも一緒にしないと気が済まないの。第一、なんで母さんに言うんだよ。直接俺に言ってくればいいじゃないか。」

じゃあ、そう伝えとけばいい?

「もう、いい、そうやって間に入るから母さん、ストレス溜まるんだろ、お医者さんにストレスが原因だって言われたんだろっ、もういいよ、俺の方から電話する」

ええっ。緩衝材のつもりで間に入ってた私はこの展開に慌てたが「こういう面倒なことは早く処理したいから」とさっさと受話器を回す。

あんまり語気荒く話し始めたので、気の強い母と揉めるんじゃないか、いや、母は傷つくんじゃないかと、そばにいられずトイレにこもった。

長い長い電話のやりとりが聞こえてくる。

私は用もないのに出るに出られず、個室に座り続ける。

もう、いくらなんでも終わったかと、出ていくと、まだ話していた。しかし、息子の口調は穏やかに時々笑いながらに変わっていた。

「だからさ、俺は何にも変わってないから。コロナが終わったらまたいつでも行き来できるし。それに俺と喋りたくなったら直接電話してくれてもいいんだし。」

なんだか、平和的にことは進んでいるようだ。

受話器を切ると「話はついた。大丈夫、理解してくれたから。あと、ばあちゃんは、相当、母さんのこと好きだぞ。だから煩く絡んでくるんだな、あれは」

うん。わかってる。最近、どうもそうらしいと薄々わかってきた。

「もう心配しないでぐっすり寝ろ」

正直、母の方が心配だったが、言われた通り寝た。

それでもなかなか寝付けない。

 

今朝、朝食の前に隣に顔を出した。孫に拒絶されたと哀しんではいないだろうか。

母は意外とケロッと笑ってみせ、「大丈夫よ、もう来ないものと思ってます」それから「あの心配性はなんとかしないとね」とやんわり神経質だと言った。

違うんだよ、息子は私に感染させちゃならぬと一生懸命なんだよ。。とはお説教が長くなるので飲み込んだ。

それでもかわいそうだ。

姉の帰りが遅い向こうの家は、今年は豆、まかないのか。

それともこれから豆買いにいくのか。

せめて豆くらい買ってきてあげようか。

でも、ほらよって渡すみたいで感じ悪いか。

もう解決したはずなのに、グルグルいろんな想いがよぎる。

そこに息子が起きてきた。

で、冒頭に繋がるわけだ。

 

「え?行ってくれるの?おばあちゃん喜ぶよ」

「考えたら、無病息災を願うんだろ、節分って。じゃあやっといた方がいいかと思って。マスクして行けばいいかと」

それからまた母に電話をしたのだ。

「孫ちゃんは本当はそういう優しい子だっておばあちゃんはわかってたって、なんか上から目線で、許してあげるって感じで偉そうに言われた」

苦笑いし、顔を洗いに洗面所に消えた。

無病息災なんて理由つけて、「仕方ねえな」ってばあちゃんの言うこと聞いてやろうと思ったキミの方が一段上だと、わたしゃわかっとるよ。

ありがとう。

今年の節分、忘れないよ。