やっぱりあなたが好きなの

Netflixに出戻った。

夫が夜中まで見続けるので、解約したのだった。

彼の体を思いやってというよりは、ちょっと意地悪してやりたかったのかもしれない。

・・・かもしれない、じゃない。してやりたかったんだ。

 

Amazonプライム会員だから動画はそれでいい。あんまりあちこちに登録するのも会費がもったいないし。

シンプルがいいんだ。

グレイズアナトミーを、Netflixで一気に観た。

無料配信している15シーズンまで観終わった直後の私は、それからどのドラマを観ても物足りなく、夢中になれるものに出会えなくなってしまった。

まるで大恋愛が終わったばかりのように。

もうあんなに熱くなることは二度とないだろうな・・・。

誰に出会っても違うと思ってしまうの・・・。

もう私、恋なんてしない。

と、いうような。おそらく。体験がないので想像だが。

この数ヶ月、数話観ては

「違う」と途中で投げたされた作品は数えきれない。

グレイズ・アナトミー』は、シーズンごとに入れ替わる登場人物の中に、毎回必ず一人は気に入らない奴がいて、「こいつやな奴だなあ」と思うのだが、それがまたいいスパイスになるようで、引きつける。

主人公のとる行動も全く自分には理解できなく、文化もモラルも全てがびっくり刺激的。

イライラしたり、ドキドキしたりしながらも目が離せない。

全く理解できない人たちの繰り広げる世界だから、この先どうなるの、どうなっちゃうのと、ぐったり疲れながらもついつい観続けてしまうのだった。

数ヶ月、経った今日。

またNetflix、覗いてみようかな。

不意にそう思った。

なんとかプライム会員の特典を生かそうと、結構探してみたが、好きなのが見つからない。

やっぱりあそこが合っているのかしら。

よせよせ、シンプルを目指しているんじゃなかったのか。

880円を無駄にするまいと、また変に「ああ、今日も観てない。今日も、観てない、もったいない」と強迫観念を持つんじゃないの。

およしよ、と肘を引っ張る良識のある私が頭の中で止めにかかる。

・・・・。

でもさ。よくよく考えてみてよ。

ドトールに週一回行って、そこでまったりコーヒータイムを楽しむとする。250円✖️4で1000円。

コロナでしばらく、それもできないから、その分浮いたと思えば、お釣りがくるよ。

フリックス氏のもとに戻ろうと、それを振り払う私が、屁理屈をこねる。

「だよね〜」

一人しかいないリビングで、そう声を出した。

いいことにしよっと。

【お帰りなさい。トンさん。】

フリックス氏は、即、数ヶ月前使っていたアカウントを呼び出し、私と結びつけ迎え入れてくれた。

まるで「そんなのお見通しだったさ」と見透かされていたようで、少し悔しい。