昨夜、目上の知り合いから立派な自然薯が届いた。
毎年この時期になると送ってくださる。
「相当重いですよ、大丈夫ですか、どっか置きますよ」
厚さ20センチほど長さ1メートル以上あるダンボールは芋が折れないよう、おが屑がずっしり詰め込まれている。
配達してくれたお兄さんが、ガリガリの私をチラリと見てそう言った。
じゃあ、こっちにお願いしますと置いてもらった。
さあ。一仕事だ。
頂き物をすると心が弾むと同時に、あれこれやらねばならぬことが頭に浮かぶ。
お礼状、それから箱を開けて大量のおが屑を捨てながら芋を取り出し、新聞紙に包んでご近所に配る。
この長い長い自然薯はその粘り強さと産地から届いた鮮度の良さで評判が良く、毎年お裾分けに持っていくのをみなさん待っていてくださる。
自分が仕入れたわけでもないのに、わあ、今年もいいのと笑顔になるのを見るのはちょっと得意な気分になる。
お礼状は下書きだけすぐ書いた。
箱を開けるのは明日にしよう。
今朝目が覚め、すぐに思い出す。
そうだ。今日あれやらないと。
ちょっとした重労働を思うと気が重い。
朝食後、仕方ないやるかと、立ち上がったところに夫がコーヒーを入れに降りてきた。
「悪い、上にいく前に、ちょっと玄関のお芋の箱、庭に出してくれる?」
おが屑が散らかるので庭で作業するようにしたのは去年から。それまでは玄関中に撒き散らし後始末が大変だった。
ほいよと、箱に手をかけ、その重さにうわっと、改めて腰を入れた。
古新聞の束を手に後についていく。
運び出したついでにテープをはがし、開けてくれた。
「うわ、こうなってんのか」
昨年までは出社中に私が処理していたので、自然薯がどんなふうに梱包されているのか初めて見た夫は飛び出すおが屑に声をあげた。
「ゴミ袋持ってくる、先にあらかた移さないと無理だな」
仕事中のはずの夫が乗り掛かったなんとやらで、一旦消えた。
「僕が箱斜めにしてるから、入れちゃって」
平日のお天気のいい冬の午前中。
二人で嬉しい贈り物の箱を開けている、ただそれだけがなぜか心を弾ませる。
毎年この作業を面倒だと思っていたが、来年からはこれをこの季節の二人の仕事としよう。
きっともっと、このおが屑ぎっしりのダンボール箱が届くのが楽しみになる。
太陽が高く上がった庭。透き通った空気。
コロナの暮れはいつもとちょっと違う。