ようやくここまで

結婚27周年を迎えた。

何度もあちこちで言っているが、本当にあの時投げ出さないでよかった。

あんまりの身勝手さと、思い描いていた夫婦像、家庭像からの乖離にもうやっていけないと鬱々としていた時期があった。

今にして思えば、こっちだってあちらにとって「勘弁してくれよ」とうんざりさせる要素はたくさんあったというのに、見えてなかった。

見えてる、わかってる、それでもなんだと悲劇のヒロインのように思いつめながら、その実、全くわかっていなかった。

感謝しかない。

よく私を投げ出さずに今日までいてくれた。

「結婚記念日おめでとう」

毎年夫が言う度に、誕生日でもないのに、おめでとうっておかしいと突っ込んできたが、おかしくもなんともないのだということに今更ながら気がつく。

危なっかしい日々を乗り越え乗り越え、ここまでたどり着きました。めでたいめでたい。

思えば、一番危なっかしかった会話も乾き切っていたあの頃も、夫は11月13日の朝はくったくなく「結婚記念日おめでとう」と口にしてたが、そのマイペースさが私たちを救ったのだ。

感じて欲しいことを感じてくれない、やめてと言ってもやめない、遠慮ってものをしない、誰がなんと言おうと自分の意思を貫く。

私が不満に思っていた彼の特性こそが、二人を崩壊から遠ざけていたとは。

思い詰めすぎる妻に自分大好きの夫。

本当は私の方こそ、この人は手放してはならない相手なのだと最近つくづく思う。

 

 

今夜は何にも特別なことはしない。

夫はいつものように9時過ぎまで仕事をするだろう。

息子は授業のプレゼンで帰りは遅くなる。

残り野菜をいっぱい入れてラタトゥイユを作った。

ベーコン、にんにく、なす、ピーマン、玉ねぎ、キャベツ、オリーブオイルとホールトマト。

残っていたミートボールも放り込んだから、もはやラタトゥイユではないかもしれない。

結婚記念日だから何しようと、お刺身を買ってきたりローストビーフを作ってみたりしていた年もあったけれど、余り物をぶち込んだお鍋がコンロの上でコトコトいっている今日の記念日がなんだか一番満ち足りた気分だ。