舞台裏

あの薬はいつになったら効き目を発揮するんだっ。

・・・と心の中で叫びつつ、市民権を得たダルさは堂々とのさばり今日もぐうたらぐうたら過ごしておりまする。

朝、昼はさっさと作っておいて、各自ご自由にのシステムでいこうと、冷蔵庫を開けると、残り物のカレー発見。

よせばいいのに同時に発見してしまったクリームシチューも一緒に鍋に放り込んだ。

よせばよかったよ。つくづく。これがそもそもの間違いだった。今にして思えば。

変な色になった液体の中に思いつくまま野菜を切っては入れる。

キャベツ、玉ねぎ、にんじん、舞茸。

肉っけもいるよねと豚細切れもそこに入れる。

グルグルオタマでかき回し、どんななったかと口に入れる。

うっすらカレー味のシチューのような、そのまんまの間抜けな味。まずくはないが、美味しいとも言えない。

ミルクを足した。

ここが第二の失敗。ここで方向性を間違えた。

丸くまとまるかと思ったのだ。しかし飲んでみると、カレーの風味のするミルクシチュー。

まとまるどころかキレの無いボヤけた間抜けな味になってしまった。

何かが欠けている。もったりしたピントのずれた野菜の煮物。

そうだ。コンソメ

恐る恐るパラパラ。

味を見る。うーん。さっきよりは美味しくなったような。

なーんか、ピントがずれている。なーんか。

茹でたブロッコリーを入れる。

トマトペーストを入れる。

塩。酒。

どれも違う。味が濃いのかと水を足す。

気がつくと昼ご飯の間に合わせにちょっとだけのつもりだったのが、鍋いっぱいになってしまっていた。

鍋いっぱいのヘンテコりん。

ああ、久々にやってしまった。

この無限ループ。

出来損ないの山。

 

やむを得ん。彼の力を借りよう。

床下から取り出す救世主。

こんな時、いつも私を救ってくれた。

黄色い箱にリンゴの絵の、バーーモンドくんを少し割って鍋に入れた。

たちまち懐かしい香りと色に変わる鍋。

ああ戻ってきた。

全て解決してくれた。

全ての不具合を見事にカレー味にまとめてくれた。

先程まで放り出してしまいたいと思っていた鍋いっぱいのヘンテコりんが丹精込めた野菜カレーとして今、ここに完成した。

 

「お昼、できたよ。各自勝手に食べてね」

降りてきた夫は「お、カレー?」喜んでムシャムシャ平げた。

「野菜、いっぱい入っているからね」

「うん、美味しい」

よし。大丈夫なようだ。

セーフ。危ないことろだった。