学生最後の誕生日

27日は息子の22歳の誕生日だった。

「ピザ、ここしばらく食べてないな」

ということで、本人の要望でピザパーティにした。

そうは言ってもそれだけだとあんまりだから、好物の唐揚げやコロッケなんかを拵えようと密かに計画していたのに、当日はやっぱりどうにもこうにも状態で、結局、ザ、あんまり、なテーブルになってしまった。

「いや、いい。むしろ、ピザのみ、がいい」

本心なのか、それとも気遣いなのか。

そういや、幼稚園の時にもこんなことがあった。

「ケーキ焼いてあげるね」

すると本当に申し訳なさそうに彼はこう答えた。

「あのさ、お母さんのケーキはまた、普通の日にさ食べるからさ、誕生日はお店のがいいな」

あれも気遣いだったのか・・・いや、あれは違う。

その証拠に「自由が丘の駅の前にあった、あのケーキ屋さんのがいい」と言ったのだ。

その名もダロワイヨ。名店だ。母と買い物に出たついでに、御馳走してもらって味を覚えたに違いない。

クリスマスには

「あのさ、ケンタッキーがいいな」

やはりおずおずと、しかし、キッパリと張り切る私のローストチキンを拒否した。

ううむ。

 

夫は仕事の切りがつかず、二人で大きなピザにビールというなんとも味気ない誕生日になってしまった。

「ごめんよ、いろいろ作ろうと思ってたのにさ。学生最後の誕生日だっていうのに」

「いや、本当に、本当にこれがいいんだ。気にするな、本当に」

誕生日にあれこれ作ってどうだってやるのは、こっちの自己満足に過ぎない。

それでもその自己満、やりたかったんだよなあ。

ピザは美味しかった。お腹は満足。