つるんと冷たいよ

お裾分けで水羊羹をもらった。

カップ型のもので5つ。塩小倉、小倉、抹茶。

もらったときすぐに思ったのが、「あ、これ夫の昼ごはんの時に添えてあげよう。」。

このところ立て込んでいるらしく、昼はパッとおにぎりだけですぐまた仕事に戻る。

さすがにそれだけでは燃料がもたないらしく、時々夕方に降りてきて

「まだ長引きそうなんだけど、ちょっと何かない?」

と小腹にいれる。

先日、たまたまおやつに買ってあったどら焼きを見つけ

「これ、食べていい?」

と嬉しそうにパクつき

「あぁ、頭がすっきりした」

と上がって行った。

それが記憶にあるものだから、パパッと食べられるし、ひんやり冷たいし、あんこだし、これは喜ぶに違いないと思ったのだ。

塩味のおにぎりの横に水羊羹。

昼の糖分なら脳味噌のエネルギー源になるだけだし、こりゃいい。

その日の晩、夫はいつもより早く仕事が終わり、3人揃って食事をした。

秘密兵器をひけらかしたい気分から、つい一番早く食べ終わった夫に

「水羊羹あるよ」

とチラつかす。ところが

「んー、今はいいかな」

やんわり拒否。

しかし食べ終わった息子が冷凍庫からアイスを取り出すと

「僕もー」

雪見だいふくには手を伸ばした。

ま、そうか。夕食後に食べるものではないか。

翌朝、朝食後の夫にまた勧める。

「水羊羹、食べる?冷たいよ」

もはや、石焼き〜イモ、お芋ちゃんだよ、ホッカホカだよってなもので、そっと添えるのとは趣が違っている。

「あ。いいや」

夫の方もブロック大勢が出来上がりつつある。

おかしい。水羊羹自体は好きなはずなのに。

わーい、と喜ばせるはずのものが、すでに押し売りに近い。

遅く起きてきた息子のお盆にもそっと水羊羹を乗せておいた。

「ごちそうさま。あ、俺、これあとでいいわ」

スッとはじかれた。

つるんと、美味しいのに。

おにぎりをお皿において、大急ぎでスーパーに行って戻ったきたら、お皿が空になっていた。

しまった。留守中に食べられた!

明日こそ。

絶対脳疲労に効くんだって。