朝、箪笥の引き出しを開け、そこにあるセーターが流石に、暑苦しく思えた。
コロナコロナで、気がそっちに行っている間に、肌寒い季節が終わっていた。
なんだかつい最近まで、コート引っ掛けてスーパーに行っていた気がするのに。
ちょっと羽織る薄手のカーディガンがあれば、もうウールの出番はないなあ。
めんどくさいと思う前に、思考を停止して、とりかかる。
納戸から冬用の衣装ケースを引っ張り出して、蓋を開けると懐かしい麻と木綿の服たちが顔を出す。
自分の持ち物だというのに、新しい服を買ったときのような
新鮮さにちょっと嬉しくなった。
単純にタンスからセーターの類を出して、ケースにしまう。
他所行きの一張羅はもったいながって使わななかった。
あの時に着ようと思って、閉まっていても、いざその日になると
「寒いから、やめてこっちにしよう。緊張する相手のときは疲れなくてあったかいのが一番」
とお洒落より防寒、リラックス度を優先させる。
根性でストッキングにハイヒールで頑張る気合がもはや無いのだ。
結局今シーズンもそのまま、移動させるだけ。
ここ数年、タンス、ケース間を行ったり来たりしているだけだ。
防虫剤を入れて、パチンとプラスチックの留め具をかける。
今度はさっき衣装ケースから床に散らばしたものたちを拾い上げ、開いたところにガサガサっと入れて、引き出しを閉める。
二段にわたり冬物の嵩張るものが入っていたところに、代わりに綿や麻のブラウスやカーディガンが収まった。
一段はからっぽ。もう一段もスカスカで隙間ができた。
こっちにも、ただ行ったり来たりしているだけの、ちょっとお他所に行くとき用の物たちが、やっぱりある。
わたしの生活、とっておきのときの機会はほとんどないけれど、准一軍クラスの出番も、そうそうない。
最近は図々しく、いちいち着替えるのが億劫で、「ま、いいか」とデパートでもスニーカー履いてスタスタいってしまう。
私のお他所って、結局スーパーとお医者さん、あとは美容院くらいなんだわ。
今年の夏は外出する範囲がぐっと狭まっているし、今年は准一軍を二軍におろして朝からジャンジャン着ちゃおう。
きっとそのほうが楽しい。
服の少ないお手軽衣替えは30分で終わった。