みんなすごい

朝食後、まったりテレビを観ているところに渡り廊下のノックが。

この音は母だ。

あえて陽気に「はあい」と返事をした。

「おはようございまーす。お元気?」

振り向くと頭にたくさんのカーラーを巻き付けた母が一枚の紙を持って入って来た。

「あなたに頼みがあるんですけど」

はい、なんでしょう。

「テレビ、ちょっと消して」

用件は体操教室の会計役を引き受けたとかで、総会に使う資料をこの通り作ってくれということだった。

「これは去年のなんだけど、数字と年度とか、ここに鉛筆で書いてあるでしょ、これを入れてこのとおり作って欲しいの。作れる?」

どうも、見た感じExcelのようだ。会社員時代にかじる程度で使ったが、Wordほど使いこなせない。

「急がないならできると思うよ。明日までとかじゃないんでしょ?」

「えぇっ?ん〜、たぶん。でも・・」

「何、明日なの?」

「ん〜、たぶん明日ってことはないと思うけど」

「無いと思うけど、早きゃ早いほどいいってことか」

「まあそうなるわね。あなたできるの?お姉さんに頼みたいけど今忙しそうだから気の毒で頼めないのよ」

任しとけっ・・と言い切れないところが情けない。

「たぶん・・なんとかなると思うよ」

これから従姉妹と目黒川を花見散歩し、川沿いのカフェでランチだそうだ。

女学生のように浮かれているのが我が親ながら可愛らしい。

母を見送り午前中から早速取り掛かる。

はじめは疑問だらけだったが使い始めると、次第に勘が戻ってきた。ゆっくりゆっくりなら、なんとかいけそうだ。

少しやっては「あれ?」「なんで?」と引っ掛かり、あれこれいじって「あ、そうかそうか」と思い出す。

やりながらこのスピードでは企業では通用しないなあ。などと思う。脳味噌を総動員フル活用してやっとこさだ。

12時過ぎ、だいたいの形が整い、完成した。

ぐったりだ。

そこからクリーニングを出し、買い物し、帰宅してから息子と自分の昼ごはんを作り、夕飯の下ごしらえをした。第二弾の洗濯機を回しながら軽く掃除機をかける。

働くママはこれを毎日やっているのか。

いや、これに身支度、送り迎え、通勤電車が加わる。いやいや、もっとだ。職場の人間関係。PTA,気にくわない誰かの言う嫌味が耳に入る時もあるだろう。

すごいとしか言いようがない。

本当にすごい。すごいです。

ちょろっと資料作成しただけでこんなに疲れるんだから。

在宅でも通勤でも働きながら家事育児を主に引き受けているしんどさは、私の想像を遥かに超えている。

・・・。

毎日会社に行って帰ってくる夫にも、もっと優しくしてあげないとなあ。

お煎餅くらい好きに食べさせてやらんと。