親父と息子が戯れる土曜日

 

なんにーも、建設的なことはせず、もう夕方。

息子と夫が顔を合わせると、必ず若造が中年男のデリカシーのなさを攻撃し、うるさくなる。

やれ、クシャミをする時に口を塞いでないだの、やれカレーを啜るなだの。

青年は衛生面とマナーに緩い父親が許せない。

夫の方はたとえ非難されようと、最近は素っ気ない息子が絡んでくれただけでもう、嬉しい。

片や文句を言っているのに言われた方は「ふふふ」と喜ぶ。

そののらりくらりがまた若造は、いい加減に交わされたようで腹立たしい。

「アイツは俺たちを軽く見ているんだ、母さん」

え、私も?

「母さん、そんで今年の誕生日プレゼントはどうなったんだ」

「あ、今年はお小遣いもらったよ」

そうなのだ。毎年スルーされる誕生日、今年は息子が何日か前から「おい、もうじき母さんの誕生日だぞ。毎年毎年何にもしないだろう。いい加減にしろよ」冗談まじりに何度も何度も突っついていた。そのおかげだろうか。朝起きるなり、

「おはよう。お誕生日おめでとう。これからもよろしくお願いします。共白髪まで僕とお願いします」

と言われた。

この言葉で十分だと、しみじみしているとその先があったのだ。

「でさ。時間がなくて何買ったらいいかわかんないんで、これで・・」

目の前で真っ黒な会社のカバンのファスナーをジーっと開け、中から財布を取り出した。

そしてその中に指先を入れながら

「えっと、どうかね、これくらいでいい?」

と1万円くれた。剥き出しで。

「あ、何かに入れた方がいいな」

引っ込め銀行の袋に入れた。

私はこの人のこういうところが好きだ。

そのまんま。体裁だけを整えようとしたらいくらでも要領よくできるのに、それもできない。だからといって自分の時間を無理してやりくりしてまでは買いに行くことも、しない。

昔はこの、私がどう思うかなんて全く考えもしない彼の行動に随分傷ついた。

今はそこが一番安心できる彼の素敵なところだと思っている。

「ありがとうございます。大事に使わせていただきます。」

両手でハハァっと頂戴した。

息子にもその話はしたはずなのに、また言うのでもう一度、お小遣いをもらったと教えたら

「金で片付けたなぁ、なんでも金で解決する気だな。そうい愛ことでいいのか。心はどうした、心は。金さえ渡せばいいと思ってんのか」

面白がってはやし立てる。

「いや、違う、どうしたらいいかわかんなくて」

・・・あら。お金も嬉し・・・。

息子。そういや君からは何にも・・・。