落ち着いた日々

炎症を起こしていた息子の盲腸はおとなしくなってくれたようだ。

抗生物質三日目、本人曰く「どんより重い感じ」はまだあるものの、のたうちまわるほどの痛みはなくなった。

当分刺激物や消化の悪いものは避けるようにと縛りはあるが、食事もご飯粒も普通に食べている。

普通に起きあがり、食べている。

ありがたいことである。

そういえば夫という人はどんなに仕事で追い詰められようと熱が出ようと「食べる」と言う。

精神的にまいって食欲が落ちると言うことも一度もない。

何を出しても美味しいと言って飲み込んでくれる。

これに慣れていたが、このことは彼の物凄い才能であり、私を安心させている貴重な資質だと改めて気がついた。

多少、雑に扱っても壊れない。

一緒に暮らす相棒として、これ以上のことがあるだろうか。

感謝の気持ちが芽生えたのなら、これからはもっと大事にしよう。メタボの入り口にいるようだし、息子寄りのボリュームのあるものばかりでなく、もう少し手間をかけた中年男子の内臓に適した献立を並べよう。

そんなことを考えながら、やってることは息子中心である。

当面、豚や牛などの赤身肉は食べられない息子用に昨日はたんまり買ってきた鶏ひき肉で、豆腐ととろろ芋と卵でハンバーグを作り、そのタネを油揚につめて大根と甘辛く煮て、彼用の保存食を作っていた。

夫は白菜、豆腐、きのこ、豚肉を鍋に入れ、そこにポン酢があれば機嫌がいい。

こんな手抜きのようなものを出されても「また白菜と豚肉?」と嫌味を言わない。ありがてええ。

 

息子が言った名言。

「今回のことで普段はおっちょこだけど、いざというときは助けてくれるということがわかった」

常日頃抱いていた我が母に対する不信感が払拭されたようだ。

「救急車が来たときも呼ぶときもテキパキ落ち着いてて、人が違った」

「覚えておきなさい、あれが母の本当の姿です」

「いや、あれは幻だったか・・」

火事場の底力というのではないでしょうか。