うちの姫

昨日、台所大改造に満足しつつぐったりしながらも、さあお昼を食べましょうというところに生協さんがきた。

母の注文の品を届けに行くと

「あら、いいショールしてるわね」

私が肩からかけていたのを見てそう言った。

「うん。昔の一張羅を普段使いにおろす事にしたのよ」

「わるけど、今マフラー、買わないでね」

え。

つい二日前、姉のクリスマスプレゼントにカシミヤのストールを注文した。

ついでにたまには自分へのクリスマスプレゼントにと、色違いを頼んだ。

リバーシブルの前々から欲しいと思っていた色柄のものだったので届くのを楽しみにしているところだったのだ。

「あなたに上っ等なマフラー買ってあるから」

得意げだが、どうしよう。火曜日に忘年会をする。その席でプレゼント交換をするだろうから黙っていてもそこで明らかになる。

「もしかして、お姉さんにもマフラー?私もストール買っちゃったよ」

「ええっ?」

明らかに嫌な顔をする。

「私はカシミヤ買ったわよ、あの人肌弱いからその辺のじゃダメなのよ」

「うん、そうだろうと思って。私もカシミヤ100%にした」

「いやあネッ!高かったのよっ!」

私だって高かったよう。

「いいじゃない、私はショール好きだからいろんなの使い分けて使うの楽しいから嬉しいよ」

そういっても曇った顔は晴れない。あきらかにむくれている。

まあ、もらう私が贅沢にお洒落なショールを楽しめると、嬉しいことに嘘はないんだから別にいいやとその場はそれで家に戻った。

しかしあの母の膨れっ面が残像として残る。

なんでふたっつあっても嬉しいよと言ったのに納得しないんだろう。

そうか!

母は自分のプレゼントが霞んでしまうことが気に入らないのだ。

一生懸命選んで、これは喜ぶぞうと張り切っていたのだ。その横に、似たような品が被って出てくれば、新鮮味もありがたみもどうしても減る。

実際のところ、私だって2個手に入るとわかった瞬間、もったいながらず使えるぞと思った。

自分の方は普段に使い、母の方をよそ行きにすればいいと考えたのだが、よくよく冷静になってみるとそう単純には収まらないだろう。

雑に扱うから自分で買った方は普段遣いにというのはこっちの理屈で、改まった外出のほとんどない私は、大事にとってあるつもりでもそれを身につけている姿を母が見る回数は数えるほどしかない。

見ればいつも自分で買った方ばかり使っている。せっかくジョートーな高いのを買ってあげたのにっとモヤモヤお臍を曲げるに決まっている。

そしてもっと重要なことに気がついた。

おそらくは、本来、肌の弱い姉のためにカシミヤと決めたのだ。

私がふたっつあって嬉しかろうと何だろうとそんなこたあ、どうでもいいのだ。

 

姉のマフラーを購入したデパートに電話をする。

注文した品をどうにかキャンセルできないかと、あちこちに連絡をし、最終的にカスタマーセンターからどうにか出荷寸前のところをストップをかけることができた。

ホッとした途端、どっと疲れた。

争わない、競わない。

夕方母のところにこっちはキャンセルしたからと言いに行こうと顔を出すと、パッと光った顔になり

「あら、悪いわね。」

素直に喜んだ。

「私の方は更に戻ってまた選び直すから気にしなくていいよ」

「きっと私の方が上等よ。あなたは無理しないで安物でいいのよ」

おお、うちのマリーアントワネット。

決めた。上等だろうがなんだろうが、毎日スーパーにジャカジャカ使う。