好きな女優さんが主演の映画が銀座でやっているのをみつけた。
この映画館が選ぶ作品は派手ではないが味わい深いものが多い。独身時代はよく一人で行った。映画が好きなのか、映画館に座っている自分時間がすきなのか。
息子が低学年のころまでは、学校に行っている間の隙を見てさっと行ってさっと帰って楽しんだ。
ずいぶんと一人で映画館というのをやっていない。
そんな気力も体力もなかったからだ。
部屋からでられるようになり。
家からでられるようになり。
近所の人と話せるようになり。
スーパーのレジに知り合いができるようになった。
ものが食べられるようになって体力がつきはじめた。
このあたりからテレビを観られるようになる。
テレビで声を出して笑えるようになる。
家族と笑うようになる。
電車に乗れるようになる。
自分がなにが好きでどんなときに落ち着くのか、やっと把握し始める。
やっと自分の扱い方がわかってきた。
今、まだ私は進化の途中。
今朝、テレビで冒頭の映画とはまた別の映画館での作品を紹介していた。
私好みだし、好きな映画館だし、今日は体調もいいし天気もいい。
ソワソワする。
あの映画、この映画。観なくちゃ。
でもめんどくさい気もちょっと、する。
「あなたっていつもそう。好奇心が薄いのよ。つまんない人ね」
もはや仕事も子育てもないっていうのに、家の周辺から出ようとしない。
これは神様が行ってこいとおっしゃっているのでは。
こうやってチャンスをいつも逃すから私は世界が狭いのでは。
アンテナにひっかかる美術展も、観てみたい舞台も演芸も頭で思っているだけ。
「いつかいつかって言っているうちに終わっちゃうわよ」
若かった頃の母の声が今の私に聞こえてくる。
ネットで調べるとまだまだ座席は空いている。
どうしようどうしよう。
今日は肉じゃが作って本読んで、夕方から海外ドラマ観て、散歩してと思っていたけど。
落ち着かない。ブレブレだ。
その映画、そんなに観たいのか。
よく考えたら映画館の暗闇でコーヒーをすすっている瞬間が好きなのだ。
今それが動画配信されてたら、観るかと問えばたぶん。。。途中まで・・だろう。
新しい情報が提供されたとき、ちょっとそれに興味をもったとき。
それを掴みに行かないとものすごく損をした人生になるようで焦る。
目の前に広がっている愉快な世界に触れない自分は、なんてもったいない。
ああそうか。私はようやく、この段階に辿り着いたのだ。
自分の世界観ができあがりつつあるとき。
やっとすこしだけ、外の世界に目が向いてきた。
だれの評価を意識してでなく、自分好みの楽しさを追って。
けれどまだ体はついてこない。しんどくていつもの毎日を繰り返す。
いま、この段階なんだ。
退院から10年。やっとここまで来た。
もう10年後の私はきっともっと弾けてる。
体力も、心ももっともっと開放されている。
今日はやめとこ。
そういえば生協さんが来る日だった。
生協さんを言い訳にホッとして肉じゃがを作る午前。