典型例

図書館のカードをなくした。

ホームページで調べると身分証明できるものを持っていけば再発行できるとある。

保険証でいいのだろうか。免許を持っていないので、ときどき住所確認できるものを二つ、という場合があるのだ。予約していた本を受け取りにいく前に確認しようかと迷いながら、ま、大丈夫だろうと家を出た。

ところが、すぐ再発行はしないという。

もう一度よく探して、1ヶ月経ってそれでもなかったら作ってあげるという。

新しいカードをもらえるとばっかり思っていたのでガッカリする。

散々探して、いよいよ仕方ないと諦めて申し出たのに。それでも紛失したこっちが悪い。

書類に名前と住所を記入して、ペラペラの藁半紙でできた仮のカードを渡された。

「これはなくさないように」

こんな紙の切れ端、それこそなくしてしまいそうで財布の奥にしまい込んだ。

今朝、目が覚めてぼんやりしていると不意に「あそこかもしれない!」と浮かぶ。

財布の中身を入れ替えたときに薬局やクリーニング店の使っていないポイントカードをファスナー付きのポリ袋にまとめて入れた。台所の整理棚の一番上にある。あの中かもしれない。

急いで確認すると、あった。

あったぁぁぁ。

なんでこんなに嬉しいんだろう。あの人に会いに行きたい。ありましたぁ!と言いたい。

「あ、そうですか、じゃ、そちらでその仮の用紙は破棄してください」

きっと一緒にこの喜びを分かち合いもせず、事務的にそう言われるのだろう。

ああそうか。そういうことか。

こういうケースが多いから「もう一度探せ」と言い、見つかっても無駄にならないように仮のカードはペラッペラなのか。

典型的な例なのだと知るとちょっと恥ずかしいが、なぜか満足する。