不完全な生き物として

昨日は歯医者だった。

この冬、リップクリームを一本使い切った。これは初めてのことかもしれない。

基礎化粧品ですらいい加減なのだからリップなんて。最近では男子も当然のケアとして塗っている人も多いようだが、私からしたらかなり意識の高い行為のうちに入る。

2年前の骨折の時、ハンサムな整形外科の先生に会いに行くのに粉の吹いた足では恥ずかしいので毎日クリームを塗った。今は歯医者で唇がガサガサだと恥ずかしいのでリップを塗っている。

こうやってみると私のスキンケアは社会とのつながりがあれば、やる。なければ、やらない。というもののようだ。

その歯医者で先生がインプラントを勧める。

一つ抜いた歯があって、そこを放っておくと高低差ができて噛み合わせに支障が出るから入れ歯かインプラントがブリッジか、何かしらの対応をした方がいいというのだが、高額なインプラントを何気なく推してくる。

しかしこれは内科医の方から体力的にあまり勧めないと言われていると一度、断っている。

その記録をカルテに書いてあるのだが、この春から担当になったこの先生は、どうしてなのか理解できない。

「飲んでいる薬の名前はわかりますか。どの薬との相性を懸念しているんでしょう」

そうじゃなくて。うまく説明できない。

「えっと、なんの病気ですかと言われたら複雑で。もともと虚弱で、ちょっと疲労が溜まると心不全を起こしたり、結石ができたりします。子供の時には癲癇をやって長いこと治療していました。」

鬱になって精神科に通ったこともある、摂食障害で苦しんだ時期もある、いや、まだ完治したとは言えない、などと洗いざらいまでは言わなかったが、それももう隠しておかなくてはならないことでもない気がしている。

とにかくいびつで厄介なんですよ。

先生は「こいつ、絶対インプラント嫌なんだな」と感じ取ったのか、ドン引きしたのか、それ以上グイグイしてこなかった。

「そうですか。じゃあ、他の方法を相談していきましょう」

歪な自分を恥ずかしいとか惨めとか思わないかと言えば、うーむ、日によって波がある。

寝不足だったり気圧が低かったりした時、気持ちが意味なく落ちこむ。

そんな時は周りの人がみんなキラキラして見えてくる。自分だけ違う星から来た生物のように感じる。

比べたところで私はこのまま生きていくのだ。比較するのはいいが、自分を否定することもない。

いろんなものをぶら下げて今日も私は生きていく。

神様が私のために作った隙間をしっかり埋めて今日もいく。

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