救世主たち

好きなピアニストのコンサートDVDを買って家で観た。

去年の秋頃だったと思う。

会場に行くと雰囲気に飲み込まれ疲れてしまう。映画ひとつでも決死の覚悟で行くようなところのある自分にとってコンサートを観に行くというのは簡単なことのようで相当、ハードルが高い。

それでもいつか、行ってみたい。

演劇、お笑い、寄席、それから何故かスカイツリーと渋谷のヘリポートのある高層ビル。

行けばいいのにと思うだろうが、今のところは近所のスーパーと通院、あとは家でぬくぬくくらいが精神的にも体力的にもちょうどいい。

それでも外界を一切諦めていた頃から思えば、いつかだろうがなんだろうが「行ってみたい」と思うところがヒョコヒョコ芽生えているのは変化だ。

『64になったら高尾山』と同じスタンスで焦らず温めておく。

 

DVDに関しては、もうひとつ、買ったのがある。

ミュージカル俳優のコンサートで、これもよかった。好きな曲のメドレーを好きな声で歌い上げているのが満載で持て余していた時間があっという間にうっとり過ぎてゆく。

ピアニストにしてもミュージカル俳優にしても非日常にあっという間につれていってくれる。

ドラマは、ハラハラドキドキだったり、登場人物の言動からその人キャラクターを想像したり頭が忙しい。

本もどちらかというと、そう。読みながら、並行して何か考え想像している。

そして私はそれが好き。頭の中が刺激されるのが楽しい。

けれど時々やってくる。本もドラマも受け付けたくない。

なんだかわからないけど疲れてる。なんだかわからないけど、悲しい。やる気が起きない。自分がちっぽけで誇れるものなどないと感じて沈むとき。

その時、瞬間に現れて、彼らは歌ってくれる。まるで自分のために演奏してくれているようにこちらに向かって語りかけてくる。

誰もいない部屋で思う存分浸る。最後には一人、手を叩く。

そして

「あー幸せ」

と言ってみる。

そうすると、なんだか本当にそう思えるのだ。