日曜の午前中、映画を観た。
休日らしいことが何かしたくて、それでも身体はだるくて、本を読む気力もなくて、海外ドラマ三昧といこうかとタブレットのアプリを立ち上げたら映画の紹介が飛び込んできた。
朝っぱらから海外ドラマっていうのもなあ。作品詳細を読むとヒューマン、ドラマ、そしてアカデミー賞候補と書いてある。
賞の候補になるくらいだからきっと面白いんだろう。それを再生した。
物語は今から100年ほど前の美しい田舎の島が舞台だった。大好きな赤毛のアンのプリンスエドワード島のような風景にワクワクする。
ある男がある男にある日突然拒絶される。親友のように周囲も本人も思っていたのに、拒絶した方の男は「ずっとお前のおしゃべりは退屈だった。一人の時間を持ちたい。創作や物思いに耽ったり、考えたりする時間も欲しい。このままお前のつまらない話の相手をして死んでいくのは嫌だ」と言う。
それでも男は追いかける。それでも男は拒絶する。どっちも折れない。どっちの言い分もわかる。
どちらかというと、拒絶する方に同調していた。自分の中にある身勝手さと重なる。ある。私にもこういうところ。なんとしても自分の脳みその中に自分だけの空間を保ちたい、そこは誰とも共有したくなく、入ってきてほしくない。しつこくノックをされると苛立ちを覚える。
そして小難しいことはわからない、とにかく一緒に時間を共有し楽しみたい方の男、これは昔の私だ。
内容のない薄い話で盛り上がり、お茶を飲み、笑ってじゃあまたね、に充実感を感じていた。そしてその仲間の中での立ち位置や相手の反応を気にしていた。
どんどんのめり込んでいった。
しかし、あるところからちょっと戸惑う。
美しい島での二人の男の友情の物語だとばかり思っていたら、作品の方向性が違ってきた。
二人はどんどん意固地になり、ユーモアをなくし、狂気に満ちてくる。
映像は相変わらず美しい。けれどあるところから確実に二人は病んでいくのだった。
そして気がつけば登場人物の中のあの人もこの人もどこか闇を抱えていた。
気がついた時はエンディングだった。
・・・・・。
ううむ。
日曜の朝から重たいものを鑑賞してしまった。もっとふんわり柔らかいマシュマロやカステラのような味わいのものだとばかり思っていたのでズドーンと気が沈む。
そもそも体調が悪くて気晴らしにと思って選んだはずだった。失敗した。
どんより転がっていると息子が降りてきた。
「どうしたの」
「今さ、映画みて気分を上げようと思ったら、高尚すぎてやられた。アカデミー賞候補っていうからいいかと思ったんだけどダメだった」
大学で映画を専攻していた彼がすまして言う。
「アカデミーっていうのは、アカデミックってことだから」
「あ、そうか」
アカデミック。学術的な。
「芸術の世界では正統的な学術的な、堅実なものを言う。それが、アカデミック」
「つまり、私から一番程遠い世界・・」
「そういうこと」
そういうことでしたか。