昨日の午前中、床に転がっていると携帯がピヨロロロンと鳴った。
のそのそ起き上がり、窓枠の前に置いてある画面を覗く。
友達の名前と文章が見えた。
「花が今届いたよ。なんだか心配させちゃったね。仕事はもうすっかりヤマを超えたので大丈夫。毎日のんびり楽しく暮らしているよ。」
やってしまった。
瞬間、察する。
先日歯医者の帰り、花屋から籠のアレンジメントを送った。
元気が出るような優しい色で、キッチンに置いても馴染むような大袈裟でないものとオーダーしたが実際どんなものが出来上がったのかわからない。
大学3年の時、アルバイトで知り合った。一年に一回会うか会わないかだが、不思議と繋がっている。
今年6月に退職することにした。
結婚して夫と二人、働きながらやってきたが、途中から職場のストレスから体を壊した。何度か入院したり休職したりしたが、ここが限界、辞めることにしたと年賀状に書いてあった。
仕事を生き甲斐だと言っていたから、相当の覚悟なのだ。
負けず嫌いの彼女、悔しいだろうなあ。
3月に入ってすぐの頃、LINEを送った。
そろそろ仕事の整理や引き継ぎなどで忙しい頃じゃないかな。無理しないでね。落ち着いたらお疲れさん会しようね。
二つ年下だから、52歳。いい大人に向かって無理しないでもないだろうとは思うが、それが心配で、ついでしゃばった。
幼い頃にご両親を相次いで亡くしている彼女のことを、勝手に妹のように思っている厚かましさもあった。
返信がきた。
「残務整理なんてとんでもない。本業がフル稼働でそれどころじゃないよ。これが済んだら引き継ぎ業務だけど、考えただけで吐きそう」
呑気な自分の文面を恥じ、吐きそうという表現に身が凍る。
それから頭の隅にふらふらになりながら持病を抱え必死に仕事をこなす彼女がいつもいた。
何かしてやりたい。元気出して。頑張って。応援してる。
それが、アレンジメントだった。
チョコレートのような甘いものも考えたが、体調がどうかもわからない。花なら嫌なら玄関でもトイレでも置いてくれればいい。
少しでもホッとするかもしれない。
店頭でペンを借りてカードをつけた。
「お仕事大変そうだね。大丈夫かな。心配性の姉さんがなんだか知らんが送ってきたと笑っとくれ。」
やりすぎてしまった。
彼女にしてみたら花籠が届いてなんじゃこりゃと思っただろう。
「よかったぁ。勝手にしたことだからかえって負担になったらごめん」
犬が尻尾を降っているスタンプを続けて送信し
「では、また、ね」。
既読はついたが返事は来なかった。
やっちまった・・。