地面に寝転んだ。
いつ以来だろう。ゴロンと家の外で体を横にしたのは。
ずっと急いでいた気がする。
ずっと自分がおかしくないようにしようとしていた気がする。
変な人と思われないよう。自分が実は変わっているやつだと気付かれぬよう。
普通に。普通に。馴染んで、目立たず。
誰もそんなに私のことに注目していないのに。
そういうの、ぜんぶ放り投げて、転がった。
空は広かった。
こんなに広かったっけ。東京の空も、広いんだ。
昨日、知り合いがLINEに残した言葉に、引っかかった。
なんだか上から目線のような、ちょっと小馬鹿にされているような気がした。
腹が立ったんじゃない。
悲しかったわけでもないと思う。
ただ、なんだか私を低く見てるんだと感じて自尊心がざわついた。
嫌な感じがした。この人は遠ざけた関係にした方が安全かもなあ。
一晩経ってもモヤモヤとした消化しきれていないものが浮かんでくる。
歩く。ずんずん歩く。吹っ切ろうと、それを振り払おうと歩く。
まとわりついて離れないその気持ちをもう一度検証してみよう
改めてその人の言葉をなぞる。
おっかなびっくりその文字をもう一度読み返した。
どこにも攻撃的な言葉も嫌味な表現もなかった。
ぎこちなく遠回りに私を応援しているだけだった。
指に火傷をした。
オーブンから取り出すときに鉄板に左中指が触れたのだった。
水脹れもしていない、ちょっと触ったらヒリヒリする程度の火傷だが、そうっと撫でても痛い。
そこだけ、敏感に反応する。
心もそうなのか。
昨日の文章は、私の心の中にあるヒリヒリしている部分に触れたのだった。
それは私の問題で相手に全く落ち度も何もない。
そうなのだな。
自分ではもう癒えたと思っていた傷も、まだ、そうでもなかった。
やっとかさぶたが固まり始めた頃なのかもしれない。
もう大丈夫!と走り出さないで、でも引っ込まないで、用心しすぎないで。
それでも一つ一つ、余計な鎧は外していこう。
あの人を昨夜は嫌なこと言うなあと思ったのに、今はあの人のおかげで気がつけたと思っている。
一瞬でも、遠ざけようかと考えて、ごめん。
そして、ありがとう。