くるくるくるくる

姿勢良くローヒールのパンプスにセミタイトのロングスカート、シンプルな前ボタンカーディガンの女性。

ショートカットで後頭部が丸く高く、黒の上下のスウェットに真っ白なハイカットスニーカーの女性。

背中を丸めてホットドッグを食べているおじさんも、丸メガネで引っ詰め髪の店員も、太っちょで毛羽だったフリースの中年男性も。

佇まいが、それぞれその人の完璧の形のように感じる。

美しいなあ。

目にする人全員ではないが、大抵の人にそう思う。だから私は外に出るだけで楽しい。

 

美しいひとは毎日自分を鏡で見ているから、意外と自分の美しさに新鮮味はないのだろう。

菜の花の中を走っていくSL 観光列車の光景も、案外、乗っている人よりそれを眺めている側の方が「ああ綺麗だなあ」と感じ入っているものかもしれない。

眺める人と眺められる人。

描く人と鑑賞する人。

造る人と堪能する人。

あるときは与える側である時は受け取る側で、うまいことくるくる回る。

 

夫を支える時もあれば支えられる時もある。

息子を勇気づける時もあれば、慰められる時もある。

くるくるくるくる。

笑わせてもらって、誰かを笑わせて。

 

無意識の何かは伝わる。

言わなくても、その人がカリカリしているか、落ち着いているか、浮かれているか、沈んでいるか、不思議と伝わる。

そう考えると自分のご機嫌を管理するっていうのは、微力な社会貢献かもしれない。