ふたり

ドトールの入り口で若い男の子と女の子がコーヒーメーカーを眺めていた。

最後尾に並んでいた私のすぐ後ろに立つ。

「えぇ、だめだよ。俺、ママがいないと洗濯とかできないもん」

「大丈夫、メイがやってあげる。メイ、何でもできるんだから」

「ダメダメダメ。メイにやってもらうって決めてない。俺、他にもたくさん女いるんだから」

「大丈夫、そんなの大丈夫。メイは洗濯うまいから」

なんだこの時空のよじれた会話は。ツッコミどころ満載じゃないか。

どうやら女の子が一緒に暮らそうと誘っているのだ。

それを男の子がのらりくらりと交わしている。

二人が恋人なのか、ただの友達なのか、彼女の片思いなのか全くわからない。でも二人はクネクネくっついて楽しそうだ。

クネクネした関係でも「ママがいないと」と言ってのけるのかぁ。

女の子が発言していたらそこまで衝撃を受けなかったと思う。

確実に私の知らない世代がいるんだ。テレビの中の芸能人を実際に見たような、そんな不思議な気持ちだ。

店の隅に腰掛けて子供みたいにはしゃぐ二人の声が聞こえる。

理解できないけれど、そんな世界が実在するんだということがなぜか私をホッとさせた。

二人は子猫のように戯れている。

幸せなんだな。