朝、散歩の帰り道、向こうから何か、強そうなオーラを放って歩いてくるおばさん二人組がやってきた。
胸をぐいっと張り、狭い歩道の真ん中を並んでズンズン進んで来る。
その勢いに思わず道を開けるべく端に寄った。
「だからそうなのよっ」
声も大きい。空いている方の片手を振り回しなにやら喋っている。
二人が胸を張って見えたのは揃ってショッピングカートを引いているからだった。
通過していくその横顔が近所に住む母の従姉妹によく似てる。じっとしていない人だからそうかもしれないと凝視した。
やはりそうだ。
そしてその真横で胸を張ってしゃべっているのは、なんと我が母親。
すげえな・・・。
土曜日の朝8時。のんびり長閑な周囲を蹴散らしこの二人はいったいどこへ行くのだろう。
その後ろ姿をまじまじ眺め見送った。
あれがうちの母か。
昼前、窓際で陽にあたりながら本を読んでいると母が帰ってきた。
「もう勘弁して欲しいわよ」
弱々しい声でよろよろとカートを引きずってこっちに来る。
「どこ行ってたの」
「これ」
カートを開けると中から土のついた野菜がどっさり。
「ちょっと来て、渡すから」
え。
隣の家の玄関に回ると母は中身を取り出す。
白菜、大根、人参、色付きの赤い大根はサラダにいいと言われた、そして泥だらけの里芋がこれでもかと出てきた。
「農協の里芋掘りに行ってきたのよ、誘われて。もうみんな元気で参っちゃうわ。ついてけない」
いや、むしろぐいぐいと。。
いくらタイヤがあるとは言ってもこれを全部引っ張り、歩いて帰ってきたのか。
「ちょっと持ってってよ。こんなにいらない」
里芋の袋をドサリとよこす。
中から土のいい匂いがした。
しかし息子も夫も里芋は豚汁に入れても、煮っ転がしにしても胡麻塩振っても好きじゃない。私一人でこの量はとても無理だ。
「半分でいいよ。二人とも得意じゃないから」
そう言うとこうのたまった。
「やあよ、持ってって。あたし、里芋、好きじゃないんだもの」