魔法の粉

結局、大量の里芋とサツマイモに、本人曰く「お店の人に買えって言われたから買ってきたけどいらない」という赤大根を引き受けた。

サラダにすると美味しいよと、説明してくれただけで決して買えなどと言うはずもない。

貰うならそっちの新鮮な白菜の方がいいと思ったが

「これはうちの」とよこさなかった。

こういうのは勢いが大事だ。

戻るとすぐにそのまま、里芋の泥を落とす。

掘り起こしたばかりの朝の土は柔らかくいい匂いがする。

太く白い根が勢いよく飛び出しているのをチョキチョキ切りながら洗っていると息子が幼稚園児だった頃、遠足で一緒に行った芋掘りを思い出した。

サツマイモは蒸して仏壇にあげよう。同居していた父方の祖母の大好物だった。

さて。里芋。どうするべえか。

とりあえず一気に全てレンジでチンして皮を剥いた。

新鮮なのでツルッツルっと皮離れがいい。中から綺麗な白い芋が湯気をたてて顔を出す。

それを半分は保存用に、残り半分はマッシュした。

冷蔵庫のそぼろと混ぜてコロッケにするか。いや、そこまでして男子チームが食べなかったらガックリする。

疲れてガックリすると怒り出す危険性のある自分の生態を加味するとここは出来るだけ少ない労力で。

マッシュイモを丸め、片栗粉をつけてどんどん揚げる。

コロコロと揚がったそばからトレイに乗せる。

塩か、シナモンシュガーか、きな粉砂糖か。

そうだ、あれだ。

冷蔵庫から使いかけの、唐揚げ粉ハッピーターン味を出し、まぶした。

「ご飯だよ〜。フライドポテト、揚げたよ〜」

嘘ではない。フライドポテトに変わりはない。

残り物の肉豆腐と一緒にテーブルの真ん中にドカンと置いた。

どうしたの、これ、作ったの、すごい、食べていいの。

どうぞ。姫子さんがお芋掘りに行ったお土産。

新鮮なイモで、尚且つ魔法の粉のかかったフライドポテトはあっという間に消えた。