相性がいい相手

結局昨日の夫の行き先は不明のままだが、追及すると自分が苦しくなるのであえて、ほじくらない。

夫婦と言えど、なんでもかんでも互いに把握しあっていたら息苦しい。

ドアの蝶番のように肝心なところがしっかり合致していればあとはパッカパッカ自由な方がいい。

そう思っているのに夫はそうじゃないらしい。

私に届いた葉書も封書も読んでしまう。手帳も財布も中身を覗いてしまう。

秘密を探ろうというよりは子供がお母さんの留守に鏡台の引き出しを開けるのと似ている。

もう私も慣れたので本当に隠したいこともそうないのでそこも気がつかないふりをしているが、パソコンのロックはしっかりかけてある。

だけど、嘘は傷つく。

そしてそれを誤魔化そうとするのを見るともっと。

傷つくと怒りに変わる。感情が溢れて恐ろしい目つきになってガーッと言いたくなる。でも厄介なことにそれをやってしまうとこれまた後で自己嫌悪で凹む。

なので、黙る。とりあえず黙って己のマグマが沈静化されるのを待つしかやり方がわからない。

冷静に言葉で伝えたり、手紙を書いたりあれこれやってみたが、理系の彼には真意が伝わらない。

今度こそ、今度こそとトライしたが

トンさーん、手紙読んだ、ありがとう〜。と何故か感動するのだ。

いや、違うでしょう、ここは。ありがとうじゃないでしょう。

このどこかずれた反応にいつもやられる。

昨日は帰りが遅かった。車で出たので飲んではこなかったが、言って出た時間よりだいぶ遅れた。

息子と先に食事をしていると帰ってきた。

どうする、鍵、あける?

息子がニヤニヤ笑う。

開けんでよろしい!と言いたいところだがすべてめんどくさい。

任せる。

息子が玄関に向かい夫を出迎えた。

「逆鱗ぽんぽこ丸だぞ。オメーが悪い。知らねーぞ。」

面白がっている息子の声が聞こえてくる。

「違うの、違うの。」

「なにが違うんだよっ、オメーいい加減にしろよ、約束も守れねえのか。」

言いたいことは全部、息子が言ってくれた。

トンさーん、ごめんね、これ、買ってきた、ダイソーで、トンさんのお散歩ように、寒くないようにと思って、ほら。

レジ袋から、300円と値札のついた靴下と手袋とニット帽と、腹巻きと、ネックウオーマーと、イヤーカバー。

そしてどれも、色も形も素材も、好みではない・・・。

それを取り出して見せながらほっぺを光らせ私の顔色を窺っているバカ夫。

もうっ。怒れないじゃないか。ずるい。

「・・・早くご飯、食べれば?」

こうやって生活は続くのだ。

破れ鍋に綴蓋夫婦は今日もゆく。