一期一会

昨日、あまりにしんどく「とにかくなにかつくろう」モードで夕飯の支度にとりかかった。

ポトフの残りを使おう。手羽元と野菜でいい出汁がでている。ここにカレーのルーを入れるという手もあるが、カレーはダメ。その手は週末にとっておくのだ。

ならば。トマトの水煮・・・無い。

ガサゴソ床下を探す。

生協の『ミートドリアの素』がでてきた。白いご飯にかけてチーズをのせてトースターで焼けばドリアになるというもので、口コミもよかったので4パックセットを買ったのだが、一つ目を使った時にレトルトパウチ独特の匂いが強く、失敗したとがっかりしたのだった。

これは使い物にならんなあと、そのまま置いておいた。

ポトフのスープで薄めるなら強い風味も消されるかも。

どぼどぼ入れる。ええい、残りの3つ全部入れちゃえ。

かき混ぜて口に入れる。味はそう悪く無いが、パウチ臭がじぶとく主張している。

カレーのルーで消せるか・・いやいや、カレー頼みの術は週末にとっておくのだ。

さらにガサゴソ物色すると今度は、母からもらった大麦ごはんと野菜たっぷりトマトソースのレトルトを見つけた。

大麦飯をチンして炊飯器の白米に混ぜ込む。

野菜たっぷりトマトソースを鍋に入れる。

舐める。あら、いい感じ。

野菜たっぷりというだけあって、セロリの風味がいい具合にパウチの存在を消した。

そこに生のトマト、ピーマンをザクザク切って入れさらに煮込む。舐める。

味がぼやけた。少しだけ塩麹を入れる。舐める。

あとちょっと。だが、塩じゃない。なんだ、なにが足りない。

胡椒・・・って感じでも無いし。・・・コリアンダー。これ、いってみるか。

一振り二振り。ええいっ、いってまえ。

結構な量をいれた。

セロリの香りとコリアンダーと、ポトフの鶏出汁とドリアソースのビーフエキスと、その他諸々が混じり合い、いいところに落ち着いた。

もう、これ以上、いじるのはよそう。ギリギリラインだ。

火を止めた。今日は不満がでたらごめんってやつだな。

夜、それにチーズをかけて出した。

あとは残り物の肉じゃがと、ピーマンとナスの炒めたのを並べる。

「なにこれ、すっごくうまい」

味の染み込んだ肉じゃがのことかと思えば、息子が言っているのはまさかのアレだった。

「お気に召しましたか。それはよかった。」

「これ、なんて料理、すっげえうまい」

「名も無き皿。もう二度と同じものは作れない」