70点でいいならもっといろんなこと、気負わずにやれるわと調子にのってその翌日である昨日、芝刈りをした。
暑くなるそうだから陽の上がる前にと午前中の9時半から始めた。
ガガガガガガガッと電気芝刈り機の音がすると二階から息子がすっとんで降りてきた。
「働くな。やめとけ」
「ちょっとだけだから」
夢中にならないように。適当にざっくりとでいいと自分に言い聞かせ、ムキにならず根を積めず。
コツは全体を見渡さないこと。目の前の芝だけを見る。そこが刈れたらその脇を。それを繰り返す。
せっかちだから、ちょっとやってはどれだけきれいになったろうと見渡すと、まだまだあそこにも、ここにもボウボウ地帯が残っているとうんざりしてしまう。
そして早く終わらせようと、雑にガーっとやって仕上がりもきたなくなる。
目の前のだけを。焦らず。そこだけを。それをつなげる。
あ、きた。
エネルギー切れのランプが胸で点滅するのを感じる。
時計をみるとやっぱり30分。
ウルトラの母の仕事はいつも30分。
そこで初めてそうっと庭を見渡す。
お。やっぱりちょうど70点。完璧じゃないが、恥ずかしくはない程度に綺麗に整っている。
今日のおしごとおわりぃ。
重い芝刈り機を持ち上げながら踏ん張って足はガクガク、腕も痺れている。
やめどきだ。いつもここで完璧を目指してダウンする。
まだ不揃いなところを残したまま道具を片付け家に入った。
今朝、湿布を貼っていると夫が「どうした、怪我したの」と覗く。
「いえ。庭が。きれいになっとろうが。」
「あ、そうそうそうそうそう。トンさーん。シャッター開けて気がついた。頑張ったねぇ」
「まったく男二人家にいて、なんでいちばん痩せてる私がやるんだよ」
「トンさーん」
左右膝上の筋肉に大判の湿布を二枚。膝裏にも左右一枚ずつ。
「ほれ、美しかろう。見よ、芝を」
70点の仕上がりを恩着せがましく褒めろと言う。
ほんとだねえ。すごいねえ。
芝刈りができるだけの気力体力と、褒めてくれる家族と、効き目のある湿布。
幸せだ。