昨日午前中、整形外科に行ってきた。
名前を呼ばれ廊下を歩いて診察室に入ろうとしていたら、先生がヒョイと顔を覗かせ私の歩いている様子を確認なさった。
「あ、すごいすごい、ちゃんと歩いてる、うん、いいね。すごくいい」
おそらく骨折してギブスを外しかけている患者の経過観察の段階ではよくあることなのだろうけれど、思いがけないことだった。
診察室に入ってくる数歩とレントゲンでも診断はつくのに、わざわざ立って出てきてくれた。
大事にされてる気がして嬉しかったのだ。
この先生のところはいつ行っても混んでいるのはそういうとこなんだろう。
「骨が弱いからまだ安心できないけど。よく足を動かさないと筋肉が固まって動かなくなる人がいるんだけど、大丈夫。うん、うん、すごくいい。すごくいいですよ」
いい気分でスーパーに寄り、みんなの好物作っちゃおうと鶏胸肉を買う。
帰ってすぐに塩麹につけ、パン粉をつけた。
昼ごはんを食べもう一つ、今度は新規の精神病院の方へ予約を入れる。
紹介状があるのでそれを伝えれば簡単に済むと思っていたが違った。
まず、通話中でなかなか繋がらない。
そんなに混んでいるのかと緊張する。
やっと繋がり初診の申し込みをしたいと告げると「私どもは広告とか一切致しておりませんの。どこで当院をお知りになりましたか」と聞かれた。
もう、ここで呑まれる。
しどろもどろに今通っている病院からこちらを勧められ紹介状もあると言うと何科の何先生ですか、紹介状はお持ちですかと確認された。
「当院は混み合っておりまして、ご予約のお時間にいらっしゃられましても一時間お待ちになるなんてことはザラなんですけれど、ご了承いただけますか?」
「あ、はい、それはもちろん大丈夫です」
「今日のお電話でも一ヶ月以上お待ちになると思いますがよろしいですか」
「はい、よろしくお願いいたします」
名医とは聞いていたがすごいところのようだ。
「はい、では、どういったことにお困りでいらっしゃるのでしょう」
事前に作る仮カルテに記載するのだろう。ズバッと切り込まれた。
周囲に誰もいないが電話に向かって自分の症状について声に出す。
これは何度やっても落ち込む。
軽い取り調べのようだ。
「ではお調べしますね」しばらくしてその女性は私の予約を2月の28日に入れてくれた。
やれやれ終わったとホッとしかけたそのとき、付け加えられた。
「当日は診察の前に山のように書いていただく書類がありますので30分ほど早くきてください」
山のようにという言葉に怯む。
細かく症状について書かされるのか。洗いざらい話すつもりでいるが、いざ紙に書き込めとなたとき、どこまで自分を晒せるだろう。こーわーいー。
いい気分でいた午前中からズドーンと沈んだ午後。
落ち着かなくてやたらと作り置きをこしらえる。
麻婆大根、大根の甘辛煮、鶏大根、炊き込みごはん、けんちん汁、茄子と挽肉の味噌炒め。
落ち着かない落ち着かない。
作業をしている間は気持ちがそこにいく。
立ち仕事と午前中の通院で足が疲れて痺れて痛い。明日取り行こうと思っていたのに処方箋の湿布を取りにソワソワまた外に行く。
落ち着かない。落ち着かない。
夫と息子の食事をお盆にセットし、フライをトースターで温めるようメモを残すと
疲れ果て、頭も体も機能しなくなった。
布団に入り、さっさと目を閉じた。
逃げるように目を閉じた。
朝。
新しい朝。まっさらな一日。
あったかい布団の中で思い出す。
そうだ。そうだった。
こんなんでもいいとしたんだ。こんなダメな状態でも幸せと思っていいとしたんだ。
あのメモに付け加えよう。
「誰かの言葉に動揺したり、傷ついたり、自己嫌悪に陥ってもそんな状態でも赦す。
それでも呑気にしてていい。まったくなんの問題もない。」
今日の私はもう大丈夫。