無粋じゃのう

じわじわ身体が良くなってきている。

やはりかったるく怠いがこの程度ならよくある感じ。

外は天気。明日からグッと気温は下がるという。今日のうちに銀杏並木を見てこようか。

北の方で暮らす人達から見れば下がると言ったところで予想気温15度。

なーにを甘っちょろいと笑われそうだが、痩せた身には冷気が皮膚から直接骨まで染み込んでくる。

キーンと冷え切った並木道。ダウンに包まれベンチに腰掛け空を見上げる。冷たい風に吹き付けられ寒いから、スタバで買ってきたコーヒーを火傷しないようにそうっと飲む。コーヒーの香りと散り始めた黄色い葉っぱ。落ち葉を音を立てて踏み遊ぶ小さな子を眺める昼下がり。。。

なんて、無理なのだ。

ほっかほかのお日様の下、呑気にただ、ぼんやり過ごしたい。

大学の授業が休校の時、「ちょっといこうか」と仲間4人で見に行った。学食であんぱんを買って、そこでみんなで食べた。

11月だったか12月初旬だったか、覚えていない。

あんぱんを持って行ったのはおやつだったのか、昼食だったのか。

銀杏そっちのけでそれぞれの恋話を突っつきあっては笑っていた。

銀杏の黄金と重なるきらきら。

それに呼ばれて50を過ぎた私は外苑前のあそこに行きたいのだろう。

ずっと頭にあった記憶だが、そんな時代もあったっけといつもその前を車で通過した。

やっと穏やかな気持ちが戻ってきた自分を確かめたいのかもしれない。

昨日は晴天だが強風だった。

「外苑の銀杏並木、行きたいなあって思ってるのにこの風で葉っぱが落ちちゃう」

用事で来た母に世間話のつもりでつい話した。

「あ、この前もう行ってきた。だめ、今年は。なんか人が多くてごちゃごちゃしててちっともよくなかった。ベビーカーがいっぱいでうるさくて紅葉も何もないわよ。ほんと、もう、ごちゃごちゃで、ベンチもどこも空いてないし、今年はだめ、たいしたことないわよ」

あぁぁぁぁっ・・・。

でたな、私のお楽しみをそうやって潰すその悪い癖っ。

ベビーカーで賑わっててもいいんだよ。

みんなが浮かれて出てきている場に混じるんでもいいんだよ。

むしろそれを感じたい。

ごちゃごちゃって言うな。

シュルシュルシュルシュルと、青春の思い出までもがしぼんでいった。

くっしょう。

他にもまだある行きたい所。美術館とか公園とか、展覧会とか。

絶対母には言うものか。

行けたらいいなあと想像している頭の中の映像を

「あ、そこもう行ってきた。たいしたことなかった」とパチンパチンと潰されてはたまらん。

さて。今日はどうしよう。

もう1日、体力温存しておこうか。

焦らない焦らない。きらきらはここにもちゃんとある。