欠品

体調を崩した。

ネットスーパーのお世話になろうとパソコンを立ち上げる。

これの便利なところは、画面上の操作で中性洗剤も精肉も、洗濯洗剤も、お米も、いっぺんに頼めるところだ。

重い荷物を抱え歩き回らなくてもいい。

どうせ頼むのならと、キャベツや玉ねぎ、米、油、ごま油、片栗粉、洗剤と、重いものを中心に注文する。

そうだ、すぐにまた週末だ。あんまり動きたくないからカレーと鶏そぼろと鶏照り焼きの作り置きをしておこう。

たくさん作って冷凍しておいてもいいと思い、500、400、750gと、ドドーンと仕入れることにした。

12時に注文確定送信、2時半に届いた。

大きなコンテナから出された品物を受け取り、しまう。

自分でたくさんあれこれ頼んでおきながら、めんどくさい。洗剤はこっち。缶詰はこっち、お米は米櫃に入れて・・。

これで全部か?受け取った袋を全て空っぽになっているか確認し、横になった。

しばらくして、さあ台所始めようと冷蔵庫を開ける。

そういや、さっきしまった覚えが・・ない・・。

ないのだ。肉類が。ごっそり。

いやいや、粗忽な私のやることだ、野菜室に入れたかと、洗剤と一緒にしたかと、はたまた缶詰と床下に入れたかと、あちこち探すがない。

頭がぼんやりしていて、頼んだと思ったのは勘違いかもと、注文履歴を見ると、確かに、鶏肉、挽肉と、ある。

どうしよう。

自分がミスをすることはよくあるけれど、業者のミスは基本ないものと思い込んでいる。

店に連絡をする前にもう一度冷凍庫やら洗面台やら探し、やっぱり無いと電話した。

事情を話すとあっさり、向こうは「どうやら積み忘れたようで」と欠品を認めてくれた。

「どうしたらいいですか」

「こういった場合、申し訳ないですが、再配達はできないことになっていまして、返金させていただきます」

「えっ・・・」

すっかりあれこれ作り置きを拵えておく気になっていた予定が崩れ、思わず声を出す。

それを察したのか

「ご予定が狂ってしまわれると思いますが、何卒・・」

機嫌を損ねないように丁重に詫びる。

おそらくこの担当者自身のやらかした失敗じゃない。商品を店からピックアップする人、それを梱包する人、それを仕分ける人、そしてトラックに運び込み配達する人。いくつかのプロセスを分けた役割の人達が関わって届けてくれたのだろう。そして今、電話口にいるのは、何かトラブルが起きた時に苦情を聞き対応する役割を任せられてしまった人というだけなんだろう。

自分の小さく叫んだ声に恐縮されてしまった気まずさも手伝って、少し声のトーンを上げ

「わかりました。大丈夫です」

と明るく言って見せた。

「ありがとうございます。申し訳ございません。その代わりと言っては何ですが、今回のお詫びに当店のマイレージを1000円分、お客様のアカウントにチャージさせていただきますので」

返金のほかに、お金もよこすと聞いて、なんだか急にきまり悪くなる。

いや、その、お金が欲しくてゴネた訳じゃ・・あ、でも・・そう?いただけるっていうなら・・・。

「これに懲りず、また当店をご利用のほどお願いいたします」

だからやめてぇ、その口調。なんか、すっごいクレーマーになったみたいで「あ、いえ、大丈夫です」とモゴモゴ電話を切った。