芝刈り

午前中、上だけ着替え、下はパジャマのズボンのまま庭に出た。

本来なら一つ一つ、雑草を根っこから引き抜かないとならない。上部だけ機械で刈り取ったところで根っこが残っているから、すぐまたあっという間に生えてくる。

わかっちゃあいるが、もう手に負えなくなって禁じ手登場。

すぐにまた無精髭のような生え方をしてもっさりするが、その都度、刈り取ることにした。

「大丈夫かあ。あんまり無理するなよぉ」

と男どもは遠くから眺める。

機械でチャーッとやってしまおうと軽く考えていたが、やり始めるとこっちの作業も結構簡単にはいかない。少しやっては、引っかかるところを手で引っこ抜き、また芝刈りをかけ、また引っこ抜く。

もうこれは短時間で終わらせようなどと思わず、終わらない前提でのんびりやりましょ。

一旦中に入り、スピーカーとiPhoneを持ってきて、YouTubeからさだまさしのコンサートを流す。歌ありトークありのラジオ番組のような彼のは画面を観ていなくても楽しい。

どっかと地面に腰を下ろし、手の届くところの小さな雑草を抜く。

聴きながら、引っこ抜いていると、中学の頃、放課後の校庭の隅っこで仲良しの子とお喋りしながら手持ち無沙汰で草をむしってたっけと思い出す。

ちょっとやってはずりずりと場所を移動する。またちょっとやってはずりずり。

時々、芝刈りをガーっとかけ、疲れるとまたしゃがんでずりずり。

1時間半のコンサートが終わった。

続けて、今度はさださんと、谷村新司さんが大昔、NHKの二人のビッグショーに出演したときのものが流れ出す。さださんファンの誰かが作ったプレイリストのようだった。

二人の掛け合い漫才のようなお喋りと、それぞれの歌。

こんな番組あったなあ。好きだったなあ。これ。ニヤニヤしながらずりずり進む。

1時間の番組もあっとう言うまにエンディングを迎えた。

いい加減、腰が痛い。もうやめよう。

ふと見渡すと思いもよらぬ成果が出ていた。

そこにはすっきり美しい芝が広がっている。

パジャマのズボンは芝だらけ。

立ち上がり、払う。

「まだやってたの?無理するなよ」

息子が降りてきた。

声だけかけ、余計な用事を頼まれないよう、ささっと逃げた。

時計を見ると1時半。

棚から素麺を出し、5束、茹でた。

卵焼きと、汁を用意して二階に上がる。

「お素麺茹でたよ〜」

二つの扉がガッと開き、「ソウメーン」「はーい」と二人が顔を出し、降りてきた。

「お素麺久しぶりだねぇ」

すぐに集まった。

「お二人様食べる前に、庭をチェックし、私を賞賛するように。美しかろう」

窓際から外をチラッとのぞき、「ああ、きれいになった、キレイキレイ」。

よし。満足。食べてよし。