趣味を逸脱せぬこと

昼ごはん用に出来合いの油揚でお稲荷さんをたくさん作った。

母のところに持っていくと、大喜びをする。

私としてはいつもクラッカーを摘む程度で簡単に済ませる彼女の昼食用のつもりで持っていったのだが、嬉しそうにそのまま、台所のミニテーブルに置いた。

もしや。

うっすら予期した通りだ。

夕飯に回すつもりらしい。

最近、歳をとったからか母は台所に立つのが億劫なようだ。

波があり、調子のいいときは南瓜を煮たり小松菜の煮浸しをしたり、ポトフやカレーを煮込んだりしているが、基本、姉から文句が出るから渋々やっている。

お稲荷さんを置きテレビの前に戻る。この調子では今日もまた、2時ごろにおやつのような、昼ごはんを食べる気だな。

まあそれでもいいかと黙って戻った。

その後、メールのやり方を教えてくれと言われ、再度訪れた。

「ありがと、ありがと。もう、ちょっとやらないとすぐ忘れちゃって」

帰ろうとすると、ご機嫌でこういった。

「あなたにもらったお稲荷さん、あれで今晩いいわね。あとは、冷凍の餃子があるからそれとスープでも作れば、お姉さん、いいでしょ?」

うん、そうね。と思わず答えたが、やや気になる。

「いいけど・・餃子だけじゃタンパク質足りないんじゃないかな。卵焼きでも・・」

「あ、そう。卵ね。そうねえ」

やらないつもりだな。

自宅に戻り、夕飯の支度をする。我が家は今夜は作り置きのミートソースでスパゲティだ。それに鶏胸肉を塩麹で下味をつけたのを焼くだけ。

卵焼き、焼いていって持っていってやろうかなあ。

ほんのちょっととの手間だ。

散々迷ってやめた。

そうやって何でもかんでも私が私がと出張るのはいいこととは思えない。

あちらはあちらのやり方がある。

うちはうち。

親切もお節介も、ある程度で線引きをしないと苦しくなる。

こんなに一生懸命やってあげてるのに!

何の気なく母が言った言葉に傷ついたとき、そう思って恨むようなことになる。

勝手に焼くお節介に要注意。

認められたい、感謝されたいと思っていないか。

お節介は趣味に留めましょう。