枯渇しとる

あまりの調子悪さに二階で寝ている間に夫がお煎餅のお徳用袋を一気に食べていたと知り、こちらも一気に力が抜けた。

なんのために。

なんのために野菜を多く、タンパク質も落とさず、物足りなくならないようカロリーなどは気にせず、揚げ物も出し、できるだけお惣菜を買わないようにしてきたのか。

二年間の不摂生で夫の中に溜まっているはずの添加物やなんだかわからないよろしくない物質を浄化させたいからだ。

厳しく管理すれば反動がでるだろうと思いあえて、週末という約束を簡単に破ってしまうアルコールも、アイスクリームも大好物のお煎餅やスナック菓子も黙認してきた。

まあ、普段の食生活を続けていれば、ある程度のイレギュラーもリカバリできるさと、黙っていたのだ。

普通の量の普通の時間帯のおやつであれば。

お煎餅平らげ事件が発覚したのは夕食後であった。

食後、またしても二階で横になり、水を飲むために降りていくとなにやら醤油の匂いがする。

ああ、少し食べたのね。私もちょっとお腹にいれておこうか。

・・・。無いではないか。袋ごとないではないか。

慌ててゴミ箱を開けるとあるではないか。あるではないか、徳用お煎餅の大袋の空が。

夕飯にワインを一人で一本飲んでしまって、やだなあと思いながらも、自分の体力不足のために見て見ぬふりをした。

エネルギーがなかったのだ。

おいおい。あんまりではないか。おいおいおい。

「これはどういうおつもりですか」

空袋を宙にぶら下げ、低い声で尋ねた。

「あ、ごめんなさーい、バレちゃった、食べちゃった、なんか嬉しかったから」

テレビを観ていた夫が、いつものように悪びれもせず、おどけて笑って振り向いた。

こんのぉ・・・・。

「なんだかとてもダメージが強いので、もう寝ます。今晩はもう話しかけないでください」

「ごめんなさーい、トンさーん、怒んないでー、ごめんねぇ」

あ、妻、本気で怒ってると察知し、ゴメンを連打する。が、CMが終わるとまた画面に戻った。

 

一夜明けて今朝。

「おはよー。昨日はゴメンねー。もうしないからー。ごめんなさーい」

連打は続く。

もうしないからーを私は当てにしていない。

薄々、こんなこともあるだろうと、これまでの経験上知っていたはずだ。

疲れ果てて笑顔を作れない妻のハートに、今は、「まったく。何度目だっちゅうんじゃ。身体を労わる年齢だぞ」と笑ってチャンチャンと終わりにする優しさは、湧いてこない。

愛の泉が枯渇しつつある。

いかん、いかん。こんなんじゃ。

まずは自分に満たして、なにごともそれからじゃ。

というわけでワタクシは、今日は最近はまっている韓国ドラマ「未生−ミセン−」をどっぷり鑑賞いたしますわ。

お夕飯も、作り置きで凌ぎますわ。頑張らない。一切、やらないっ。

ぐうたらぐうたら、とことんぐうたらすれば、泉に清らかな水がまた湧くであろう。