完璧だった試しがない

今日こそ検診日。

採血があるはずなので、結果待ちを見込み、予約時間の一時間前に着く。

1時間前到着と思ってそういった試しがない。大抵なんやかんや準備が遅れ40ふん前だったり、時間ギリギリだったりするのだが、ちゃんと、1時間前。だてに先週予行演習をしてはいない。

ブルートゥースのヘッドホン、あらかじめマイリストに入れた待ち時間に聞き流す音楽、場合によってはネットフリックスも見られるかもしれないと遠足気分で用意した。

新しいヘッドホンは耳に入れない肩掛けタイプなので、自分だけ音を拾いながらもちゃんと、外界の音も聞こえる。

掃除機をかけながら、食器を洗いながらも聞こえ、電話や家族の呼ぶ声も聞こえる。いつでもどこでも聞きたいラジオや音楽が聴けて半分自分の世界に入れるので気に入っている最近のニューマシンなのである。

耳に入れ込まないので、音は当然漏れる。が、首掛けのヘッドホンの上に向いた小さな穴から聞こえる音は音量の目盛りを相当小さくしても聞き取ることができるのだ。家族がテレビを観ているそのそばで使っていてもうるさいとは言われなかった。

今日は病院内で試してみたい。

音楽程度なら音量を下げれば人様の迷惑にもならずに聞けるかもしれない。ドラマのようにセリフを聞き取るものはどうだろう。外部に音が溢れない程度の音量でも十分楽しむことができるだろうか。

そこを検証したい。

ダメなら音楽を流せばいいや、それだけでもずいぶんリラックス感が違う。

家にいたらついつい積読になってしまう本も持ってきた。ドラマがダメな場合はこれを読みながらお気に入りの曲を聴くとしよう。

待つ気満々だ。

予約票を機械に入れる。担当医の名前と診療予約時刻が画面に出た。よし。

ところが血液検査の件が表示されない。私の勘違いだったかともう一度、財布の中の予約票を広げてみたが、やはりこっちにはちゃんとある。

またやったか・・。

ああ。。。どうしてこうなんだ。

血液検査はなんと9月4日じゃないか。

幸い時間はたっぷりあるのでダメもとで内科受付に行き事情を話すと「お待ちになる時間が長くなりますが」ということで当日検査の予約を入れてくれた。

まあトラブル発生しかけたが、セーフ。

気を取り直し、採血の順番待ちにさてさてと、ヘッドホンを取り出す。

私のiPadにはWi-Fi機能はないのでいつもはiPhoneからリンクさせている。

お楽しみを始めようとリュックの中の携帯を探す。

・・・ない?

・・・ない・・!

ない〜ッ!?

なんのためのヘッドフォン、なんのために用意したプレイリスト。ネットフリックスが楽しめるかどうかの検証どころじゃない。

ああ。どうして私はこうなんだ。

これでバッチリと思ってバッチリだったことがない。

学生の時だって満点かもと、思って戻ってきたテストが満点だったこともない。

 なんだヨォ。

急に診察までの一時間半を持て余してしまう。

こうなってくると持ってきた本も仕方なしの暇つぶしに成り下がり、気が乗らない。

診察券、よし。保険証、よし。ハンカチよし。財布、よし。ヘッドフォン、iPad、アイペンシル、よし。

完璧。

チェックが甘かった。携帯が抜けていた。当たり前すぎて抜けていた。

Wi-Fiがなけりゃ何にもできやしない。

 

ちぇ〜。

あと、一時間、清く正しく読書するしかない。

 

グレズってる

淡々と過ごしている。

感情の起伏が無いのは精神が安定しているからか

それとも下降しているからか。

それでも「こんなもんだよ、生きるって」と自分に言い聞かせている。

ネットフリックスで海外のドラマをずっと観ている。

夫があんまり夜中まで観るので解約した。解約しても来月の支払いまでは観ることができると言うので、せっかくだからそれまでの間にと一つのドラマを観たら、どっぷりハマってしまったのだ。

彼が夜中にこっそり観ようとしたとき、「あれ?あれ?」と解約済みになっていることに気づけばよい、ウッシッシとこっそりやった仕業だが、見事、ミイラとりがミイラになってしまったわけだ。Netflixの方こそ、思う壺、ウッシッシとほくそ笑んでいるに違いない。

シーズン12まできたが、先は長い。シーズン17まである。

グレイズアナトミー。

「おヌシ、今日もグレズってんな。よいよい、グレズれ」と息子が笑う。

 

ずっと観続けていると、当初は嫌悪感を感じた、登場人物たちがなんでもズバズバはっきり言い合う激しさにも慣れてきた。

ぶつかり罵りあい、だからと言ってバッサリ関係が切るのでもなく続く関係。

あれ、その人のこと嫌いなんじゃなかったの?というような相手に何事もなかったかのように話しかけ、食事に誘う。わだかまり感ゼロで声をかけるのは外国では普通なのだろうか。日本でも普通なのだろうか。

人と人の繋がりって大事大事と気を遣う必要はそうないのかもしれないな。

親にも姉にもつい、傷つけないようタイミングや言葉を選ぶ私からしてみれば、激しくぶつかり合うなんてことは恐ろしくてできやしない。

そんなことができるのは夫だけ。

一番ムカついて、一番気を使わない。一番甘ったれている。

いちばん大事にしなくちゃならない人なのに、ついやってしまう。

なんかムカつくんだよなあ。

スケールデカくなりてえよ。

 

 

淡々と。できた。

「自信持っていいよ」のおまじないの賞味期限は切れてしまったようだ。

体重計に乗った朝、またぐらつく。

数字の増減で自分を上げたり下げたりするのは、かなり意味がない。

人間は本質だし、魂だし、目盛の数値なんて本当は私の価値となんの接点もない。

理屈でわかっているのに気持ちが勝手に反応するのは我ながら不思議だ。

理屈でわかりきってないのかもしれない。

それでもいじけて、引きこもらず、淡々と昨日と同じように過ごす。

昨日はその前の月曜日と同じように過ごした。

おまじないの余韻があったから、いい気分だった。

今日もそんなふうに表面上はしていた。

側から見た目には、私のアップダウンはわからないだろう。

日が暮れる。

月曜と同じように過ごした昨日、と同じようにできた。

心は狼狽えつつ、同じように淡々とできた。

これを繰り返せばいいんだ。

多分。

内面で上がったり下がったりするのも、そのうち、なんだか馬鹿らしくなってくるんじゃないだろうか。

ちょっとそんな気がする。