とうとう一階リビングの机を窓際から撤退した。
パソコンを置いてある無印の折りたたみデスクは私の落ち着く場所だった。
そこからぼんやり通りを過ぎていく人を眺めたり、空を眺めて過ごすのが好きだった。
パソコンを立ち上げているのになにもしない。
ついつい何をしようとしていたか忘れ、時間だけが過ぎていく。
それだけの場所であり、とくに生産性のある場所ではない。
それでも窓際というのが譲れなかった。
机の前には窓。それが唯一のこだわり。
私の場合、机というものは勉強や仕事をする場所ではなく、両肘をつく支えとなるもの。
ぼけっと思考停止する体を支えるところ。
机と窓はどんなに寒かろうが暑かろうがセットだったのだ。
冬はここに折りたたみのヒーターと毛布を持ち込んだ。
あまりの寒さに耐えかねるとそこを移動するが、それでも1日のうちに数分でもそこに陽が当たる。そのわずかな至福のためにやはり、窓際からは動かさなかった。
はい。私は観念しました。
身の危険を感じたのです。
思えば先日夫と迷走ドライブに出かけた時も、その直前まで床に寝転び、それからここに移動してぼんやり空を眺めていた。
まだ午前だったので温度もピークには達していなかったが「窓から熱がくるなぁ」とは感じていたのだ。なのにそのままそこにいた。おそらく出発する段階ですでに体力は奪われていた。
そこに直射日光のあたる助手席で何時間もいたものだから余計に調子が悪くなったのだ。
うっすら自覚はあった。
それでも昨日も今朝も私はついついそこに行く。
どうしようもなく辛いわけではなかったからだ。
このこだわりに何の意味がある。
快適なぼんやりタイムのためにIKEAの椅子にあわせ、デスクの足も切った。
それが歯を食いしばりながら居座り続けているのはおかしい。本末転倒とはこういうことを言うのだ。
今年は猛暑と言われ、35度越えも珍しくなくなり早1ヶ月半。
ようやく、ようやく気がついた。
テレビとIKEA椅子を入れ替える。
新たなポジションにはエアコンの風がほどよく回ってくる。
同じ部屋とは思えないほど快適なスポットを家電製品に与え、住人が一番厳しいところで過ごしていたのか。
そして気がついた。
机がなくともIKEAの椅子と足を置く台さえあれば、私はくつろげる。
パソコンの入力も膝の上でできた。
しばらく無印デスクは折りたたんで隅に置いておこう。
窓から離れたが、ここでもぼんやりまったり快適だ。
景色だの雰囲気だの言ってる場合じゃない。
心地よい体感。これが一番。