今日という日

何にもやる気になれず、ただただ怠さに任せて一日中ゴロゴロ過ごす。

夫も息子も寝ているうちの一人の朝食は割と好きだ。

テーブルではなく、祖母の形見の折り畳み文机にお盆ごと持ってきてそこで食べる。

床に座って食べるのが好きなのだ。

のんびり静かに食べ、全部食べ終わると行儀悪く、そのままゴロンと床に寝転ぶ。

今日は母の日。

特別に朝からアマゾンプライムを観てもいいことにしよう。

掃除でもしようかと立ち上がっては、やはりダメだと横になる。

そしていそいそとタブレットを再生させ、またドラマの続きを観る。

起き出してきた夫と息子には冷凍炒飯と餃子をチンしてもらい、自分の昼はパンとチーズとジャム。

そしてまたゴロゴロ転がる。

そうやって一歩も外に出ずに1日が終わろうとしていた。

筍ご飯をセットして、赤魚の塩麹漬けを焼いて、あとは冷蔵庫の残りの肉じゃがやミートボールを夕飯のお膳に用意する。

体が思うように動かない時、自分が社会の役に立っていない人間のような気がする。

いいのいいの無理しないって決めたんだ。

そう言い聞かせるのもなんだか、言い訳がましく感じる。

母のところに顔を出した。

母の日だから、ちょっと世間話でもしよう。

息子の近況報告を聞きたがっているから、かいつまんで当たり障りのないところを、面白おかしく、安心するように話す。

友達ができたみたいだよ。初日、歓迎会がわりに先輩たちにお昼おごってもらったんだって。みんないい人だって張り切っているよ。

母も歳をとった。

うんうん、うんうん、あの子はいい子よ、みんなに好かれるから大丈夫よと頷く。

「じゃ、帰るわ」

「あなた、よくやってるわよ」

「え?」

「よくやってるわ。本当に」

え、いや、その、そうかしら、ありがとう。

よくやっているわと母が言った。

初めて褒められた。初めて認める言葉をくれた。

体の不調も一瞬吹き飛んだ。

たちまち今日という日がキラキラの日に思えた。