わがまま

夫が半月前に日にち指定でドライブに行こうと誘っていたのをすっかり忘れ
「この土日は悪いけどテスト勉強やらないと」
と前日になって言い出した。
「箱根は?」
あっと小さく呟き
「あれ、トンさん、その日は息子がIターンだからって断ったんじゃなかったけ」
「言ってない。息子のIターンだなって思ったけど、敢えて黙っていたんだもん。」
そうだっけ?
言ってません!
この7.8年、週末に二人でドライブなんてしたことない。たまにスーパーに一緒に行けば、お出かけしたなと言われ、私もその程度で満足するようになっているくらいだ。
それが突然、しかも日にちまで指定でドライブとなれば、そう簡単に断るものか。
「もういいっ!結局いつもそうなんだ、もー、いいっ!」
ごめーん、と謝りながらもテスト勉強優先されることは変わらない。
いつものことなんだから、それだけのことなのに、こんなに怒ること無いじゃないかと思うが上げて、下げられるとやはりガックリくる。
なにより簡単にしわ寄せされることが当たり前になっているその事実が辛いのだ。
テストにしても資格にしても会社からやれと命令されてもいないのに、夢中になって次から次へ止まらない。お金も時間もそっちに注ぎ込み続けているんだ。
土日いっぱいストライキをした。

私のストも8年ぶりだった。
月曜日、夫は箱根の旅雑誌を買ってきた。
「見て見て、ほらっ」
ずるい。
「こうやって素早く機嫌をとられるとさ、拗ねてるこっちがたんなる我儘奥さんじゃん」

ぼやく私に息子の呟きが被さった。

「買って終わりって、またいつものパターンってことあるよな」

それでも今回ドカンと怒ったのは進歩かもしれない。
これまでずっと、まあいいかと諦め流してきたが、自分が粗末に扱われたとき、腹を立てることができるほど私自身が自分を粗末に扱わなくなったということなのかもしれない。