午前中、母と、庭で採れた柿の渋抜き作業をする。
初めての試みだ。毎年実をつけるのだが、甘い年は数個もいで食べ、そうでない年は鳥が食べてくれていた。
今年は庭の手入れに来てくれた職人さんが「あの柿、どうします、取りますか」と聞いてくれた。
頼んでもいでもらい、半分をおじさんが、残り半分を我が家にと分ける。
食べてみると今年は当たり年のようだった。それでも皮のすぐ下のあたりは舌がビリッとする。
母が干し柿にするというので、確かインターネットで渋柿を甘くする方法というのを見たと教えると目を輝かせた。
「焼酎につけるの?じゃ、すぐ買ってちょうだい。たくさんあるから2リットルはいるわよ」
「いや、ヘタのところにちょこんと浸してビニールに入れるんだったと思うからそんなにいらないと思う」
「ダメよっ、足りないと困るから。あんなもの余ったって日持ちするし、いいから2リットルは買っておくのよっ」
・・・元気になってよかったよ・・。
耳の水を抜く処置をしてもらってから彼女はぐんぐんと精気を取り戻している。昨日の夜も体操教室に行ってきた。
やはり、しょぼしょぼ弱々しくしているより偉そうに威張っている方が好ましい。
仰せの通り、2リットルの焼酎が届いた。
「これから朝ご飯食べるから10時なったらきてね」
10時ちょっと過ぎ。母とテーブルに座って作業する。
「あたしがヘタを切るから、あなたそっちやりなさい」
小学生の時に図画工作でCをもらってきた私の手作業は信用されない。
母が器用にヘタの周りを切りそろえた柿を受け取り、チョポンとボールに入れた酒につけ、お盆の上に広げたビニール袋に並べる。
大きなカゴ一盛りとガラスの容器にも盛られた、でこぼこ野生味満載のオレンジ色の実を手に取りながら、どうでもいい話をする。
あれだけ苦しみ葛藤を抱えたのに、こうやって冬の日差しの入る居間で2人、柿の渋抜き作業をする日がくるなんて。
もう母とは暖かい交流はできないだろうと思っていたのに。
作業は終わり、ビニール袋の口を閉じ、北側の仏間の机に置いた。
ついでに仏壇に手を合わせる。
いつもありがとうございます。これからもお導きください。
「これ、どうしよう」
母が1.8リットル入りの焼酎の紙パックを手に言う。
だから言ったでしょう・・・と脳内で発言し
「腐るもんじゃないからお料理に使えば」
と答える。
「そんなんじゃ使いきれないわよ」
来年もまた、やりましょう。渋抜き。