昨夜は息子が夜、私がビールでいい気分で8時半早々に布団に入ったところに電話をしてきた。
「寝てた?」
寝ようとしていたとは言えない。夫になら言うが。
「おきてたよ」
「今、自由が丘なんだが。」
「まさか」
「あのですね、夜飯を・・」
「まさか」
笑ってしまう。向こうも笑った。
「今日はさ、いろいろあってさ、ジムに行ってからちょっと用事があって・・」
「いい、もういいから来るなら早くおいで。今、バス停?わかった。なんか作っておくからおいで」
ガバッと起き上がる。頭は朦朧、目はしょぼしょぼ。それでも気持ちは弾む。
親バカだ。
階段を降りてもう一度リビングに行くと夫がびっくりした顔で聞いてきた。
「どした、調子悪いか?」
「殿がいらっしゃるそうです。これから」
「ああ、そう。それはよかった、よかった。食べにくるって?そう。それはいい、たくさん食べさせろ」
ここにも親バカが。
もしかしたらやって来るかもしれないと買っておいたトンカツ用の肉を焼く。
コンロの前に立ちながら頭に歌のフレーズが浮かぶ。
♪着ては もらえぬ セーターを 涙堪えて編んでます
子供の頃、なんで着てもらえないって思っているのに編むんだろう。と理解できなかった。
あれと似ている。
来るかどうかわからぬ豚肉を 念の為にと 買っている
食べるかわからぬ惣菜を いつも意識して作り置く
女心の情緒はわからないままだったが母心は、こういうことかと納得した。