今朝、ラジオを聞いていたら意識して遠ざけてきたフリーアナウンサーが話していた。
うわ。この人嫌なんだ。
いつもなら反射的に変えるのに、今日に限ってそれもかったるく、ベッドの中で聞いていた。
なぜこの人を避けるのか。
昔NHKにいた頃は割と好きだった。お堅いイメージの国営放送の、朝のニュース番組を担当するエースアナウンサーだった。ある朝、目をはらし頭ボサボサのまま、すまして原稿を読んでいるのをみて母が大笑いした。
「この人、きっと二日酔いなんだわ」
子供だった私は、なんだか人間味のある人だなと好ましく感じた。
しかし、人間味溢れる彼はその後、不倫スキャンダルでお騒がせする。
その報道を見た、やはり子供だった私、いっぺんで嫌いになったのだった。
彼はその後、フリーになり、熱りの冷めた頃、テレビ番組を持ち、何事もなかったかのように再び画面に登場したが、すっかり大人になった私は頑なに拒絶した。
彼がちょっと悪ぶった口調で冗談をいい、笑いをとっているのを見ると
「ふん、浮気したくせに」
と冷めた視線でチャンネルを変えた。
相変わらず調子良くやってるなあ。
寝ぼけながら聞いていた。番組はラジオショッピングのコーナーになっていて、横向き寝の人に向けて作られた枕の紹介をしている。
その時、浮気男が偉そうにこう言った。
「僕もさ、今日紹介するんで持って帰らされたんだけど、カミさんが持ってっちゃってさ。彼女、横向き寝だから。カミさんもこれいいわって、言ってたよ」
へ・・?
カミさんと普通に会話してるんだ。
カミさんとわだかまりなくなく暮らしているんだ。
そりゃそうだ、何十年も前のこと、夫婦の間でなにかしらの決着がついているに違いない。
高価な指輪を買わされたのか、キツイお叱りがあったのか、厳しいお仕置きがあったのか、はたまた豪快な奥様で全く動じずだったのか、それはわからないが、離婚せずに二人の生活は恙無く続いているのだ。
それを全くなんの関係もない、一視聴者が、未だ根に持って「こいつ好かん」としているとは。
バッカみたい。私。
なんだか急に自分の独り相撲が滑稽に思えてきた。
バッカみたい。
おかしくなって、むくりと布団から起き上がった。