夕方のお客

f:id:okirakutonton:20200407181913j:image

韓流ドラマに飽きて、庭の芝刈りでもしましょと、窓を開けるとお客様が。

じっとこちらを見ていた。

いつもなら窓を開けるとパッと逃げるのに、私の姿を見ても動かない。

しばし、じっと見つめ合う。

彼がいるなら庭に出るのはまたにしよう。窓側に座り私も静かに本を読み始めた。

 

f:id:okirakutonton:20200407182258j:image

逃げない。

いつもうちに来て日向ぼっこをしていても、人間の気配を嫌うのに。

猫も人間達がワサワサしているのを感じっとってストレスを感じているのかもしれない。猫の好きな音楽とかないのかしらとYouTubeで検索したらあった。あるのだ。そういうのが。

ま、そうはゆうても。

ものは試し程度の気持ちで再生してみた。

あああ。

おちつく、まったりとしたメロディ。私が心地良くなる。私は前世では猫だったのかしら。

ふと反応しているかと彼を見る。

f:id:okirakutonton:20200407182045j:image

耳が動いた。聞いてる。明らかに聞いている。
f:id:okirakutonton:20200407182051j:image

聞きいっている。腰を据えて聞いている。


f:id:okirakutonton:20200407182048j:image
f:id:okirakutonton:20200407182054j:image

寝ちゃったよ。

 

窓を開けて一緒に聞いていた私の方が寒くなったので音楽の流れるiPhoneを庭の叩きに置いて、窓を閉めた。

そこに仕事を終えた夫が降りてきた。

「おわった〜・・・え?」

唇にひと差し指を立ててシーっと合図して、それから目配せした私を見て、庭に視線をずらす。

「来てるの。今寝たところ。猫の好きな曲っていうの流したら気持ちいいのか、寝ちゃったよ」

夫も気配を消してそっとテレビをつける。

「音、小さくておくから。いい?これくらいで。聴かせてやりなさい」

それから二人でなにをいっているのかよく聞こえないニュースを見る。

「あ、こっち来た」

夫の声に窓の外を見ると、本当にのっそのっそとこちらにむかってやってきた。

通路の真ん中で一旦立ち止まりこちらをじっと眺めている。

それからたったったったと、裏庭に消えていった。

おかしなことに曲はちょうどそこで終わった。

「帰ったよ、テレビの音量あげていいよ」

夫はボリュームをあげ、私は部屋の電気をつけた。